「精進、好きなんですよ」
――ドラムスティック、今日まで何本ぐらい折ってきたか覚えていますか。
シシド ドラムを叩いて12年くらいになるので、100組以上は買っていると思うんですけれど……。“この子”たちも当たり外れがありまして、1回で折れるときもありますし。ふつうは、4~5時間のリハ(練習)を3回やったら潰れます。
――楽器店でドラムスティックの値段を見てきたのですが、安いものが700円くらい、上の方は3000円くらい。今、使っているのはお幾らぐらいですか。
シシド これは、1470円です。
――掛ける100組で14万7000円。スティックだけでもおカネかかりますね。
シシド はい、ものすごく(笑)。
――ドラムを叩いて、初めて対価をもらったのはいつですか。THE NEWS(※1985年結成のベテラン女性ロックバンド。シシドさんは三代目のドラマーだった)に入ったときですか。
シシド 18歳のときです。THE NEWS でライヴをやってギャラを戴いたときもありますけれど、それはそのまま活動費に(笑)。THE NEWS を始めたあとに、その繋がりで戴いたお話で、青木裕子さん(注・1977年生まれのグラビアアイドル。2000年にグラビアを引退、02年、ロックバンド「icy blue」のボーカリストに)のバンドでドラムを叩いたときに、初めておカネを戴きました。
――お幾らでしたか。
シシド 1万5000円、だったかな……。
――18歳にはそれは大金。
シシド 大きいですね。しかも、行ったことがないような、大きな芝浦のスタジオでリハをやらせて戴いたりとか。
――職業として、ドラムを叩くことで喰っていけるという実感を得たのはいつ頃ですか。
シシド 「喰っていける」と思ったことは、まだ、ないですね。
――今、この段階でも?
シシド 思っていないです。
――それだけ、競争が厳しいということですか。
シシド そんな甘いものじゃないだろう、と。女性ドラマーも増えましたし、そこに入っていくということは、甘いものではないと思っています。
――パンと薔薇、という言い方があります。人はパンのみにて生きるにあらず。薔薇もないと生きていけない。「喜び」と言い換えてもいいかもしれない。ドラムを叩くという仕事には、パンだけでなく、薔薇もある?
シシド もちろん。ドラムを叩くのをやめるということを考えたことはないので。あとはそれでご飯が食べられるように、ただただ精進していくだけ、という感じですかね。
――「精進」っていい言葉ですね。
シシド 「精進」好きなんですよ(笑)。場数を踏むことが必要だと思っていたので、大学に入って、時間を自分でコントロールできるようになってからは、いろんなバンドで叩いて回っていました。その中のひとつに THE NEWS があって、「一個一個、ちゃんと実になるようにしていけよ」ということを教えてくれました。音楽の世界に関わっている人たちに対する礼儀を教えてくれたのは、 THE NEWS ですね。