「文化」は変革を拒む言い訳にすぎない
――日本には、収入格差をはじめ、多くの点で、今も大きな男女格差が残っています。
日本に根強く残る男女格差の背景には、日本の政府や企業が、社会の規範となるようなルールの変革を実現していないという事情もあります。男性が自ら権力を手放すことなど至難の業です。仮に彼らが望んだとしても、自然に実現できるようなことではありません。
このままでは、日本の男性は多くの点で(プレッシャーから逃れられず)苦労し続けることになるでしょう。
――欧米は、どのように男女格差を埋めてきたのでしょう? 日本では、男女格差の解消がなぜ遅れているのだと思いますか。日本文化が阻害要因になっているのでしょうか。
「文化」は、変革を拒むための言い訳として使われるのが常です。例えば、女性を採用しない言い訳として、「女性は家で子育てに専念したいものだ」「女性は主婦になりたいものだ」といった理由を挙げる男性上司もいるでしょう。
企業における男女格差を解消するための法制化が重要なのは言うまでもありませんが、日本では往々にして、法改正や法制化には至らない「合意」や「取り決め」の下で物事が進むようにみえます。そうしたやり方では、「多様性」など、ひと筋縄では実現できない社会変革を起こすことはできません。
日本の政界が好例です。女性議員を増やすべきだというプレッシャーが高まっているにもかかわらず、ほとんど変わっていません。これは驚くべきことです。
注:世界の国々の一院制、または二院制の下院に占める女性議員の割合を月ごとにランク付けした「列国議会同盟(IPU)」(本部スイス・ジュネーブ)のリストによると、2022年12月時点での日本の下院(衆議院)における女性議員の割合9.9%は、186位中164位。トップはルワンダの61.3%。フリューシュトゥック教授の祖国、オーストリアは25位で41%。英国45位34.6%、米国は69位の28.7%。
「有能な女性」を社会から排除する損失は計り知れない
――根強い男女格差のせいで、日本はどのような損失を被っていると思いますか。
今さら言うまでもありません。女性という人材を活用するチャンスをみすみす逃しています。野心的な女性や才能あふれる女性、有能な女性――。そうした女性たちを排除することは、日本にとって致命的な問題です。イノベーションや社会変革、日本の将来、そして、女性の雇用やキャリアを促進する政策立案にも影響を与えます。
補佐役の女性や妻以外の女性と接することなく人生を過ごしてきたベテラン男性社員がある日突然、戦力となる女性の採用や指導を行おうとしても、そう簡単にはいきません。でも、方法があります。男性優位の企業を女性にも優しい企業に変えるためのノウハウを心得ている人材を雇えばいいのです。