ですから、美男美女のカップルが誕生するのは遺伝学的にも自然な流れです。それなのになぜ、容姿が優れている者とそうではない者のカップルが存在するのでしょう。その答えは「免疫力」に隠されています。
いかに子どもの生存率を高めて遺伝子を残していくか。人類において最も重要な課題です。免疫力が高い子孫を残せる相手をパートナーとして選べるかどうかが問われています。
ヒトの免疫に関わる遺伝子にHLA(ヒト白血球抗原)というものがあります。体内のほぼすべての細胞の周りに分布し、病原体などの異物を排除する、大切な役割を担っています。
HLAは両親から半分ずつ受け継ぎ、型の組み合わせは数万通りもあります。HLAの型は血が繋がっていない関係では数百〜数万分の1の確率でしか一致しないとされています。
臓器移植をする場合、この型が一致した相手からしか臓器提供を受けることができません。型が一致していなければ「異物だ」と判断され、排除しようとしてしまうからです。しかし、恋愛や結婚における相手としては、HLAの型が違っていればいるほど相性が良いと判断されます。
例えるなら、HLAは病原体に対抗する武器のようなものでしょう。戦いに行くとき、同じ武器を2つ持つよりも、違う種類の武器を持っていたほうが臨機応変に戦うことができますよね。お互いのHLAの型の種類がかけ離れているカップルから産まれる子供は、感染症に対して強くなります。免疫力が高い子孫を残すために、本能的にHLAの型の一致率が低い相手をパートナーとして選ぶようになっているのです。
「容姿はふつうなのに意味がわからないほどモテてるな」という人は、非常に珍しいHLAの型を持っているのかもしれません。HLAの型が似ている相手ほど相性が悪い、かけ離れているほど相性が良いと感じるようになっているので、レアな型を持つ人は、多くの人にとって自分と異なる型の持ち主となるからです。
モテたくば自分を磨け
HLAの型は病院で採血してもらえば調べることができますが、容姿だけではわかりません。相手が自分と型が似ているのか、違うのかを本能的に判断しているのは嗅覚です。「なんだかいい匂いだな」と思う人っていますよね。好きな人の体臭そのものに好感を持つ人も少なくないでしょう。これには理由があって、実はHLAの型の重なりを匂いで見抜いているのです。
スイスのウェデキント氏が1995年に行った研究では、相手と自分のHLAの型の重なりが少ないほうがその人を良い匂いに感じ、重なりが多いと良くない匂いだと感じる、ということが判明しました。この匂いで型の重なりを判断する能力は、女性にしか備わっていないことがわかっています。
メスがオスを選ぶ、というのは動物界の大原則です。メスは1度妊娠すると、妊娠期間中はオスとの繁殖活動にエネルギーを割けません。特に人間の場合は妊娠から出産に加え、子育てにも大きなエネルギーを費やさねばならず、莫大な時間がかかります。