深刻化した女性差別と部落差別

江戸時代のどこが問題だったのか10点にまとめてみよう(拙著『日本人のための日中韓興亡史』さくら舎)。

①女性差別と部落差別は江戸幕府が深刻にした

戦国時代の日本女性は自由で男女差別も少ないと宣教師たちは報告しているが、江戸時代には隔離され表舞台での活躍もなくなった。穢れなどを理由とした身分差別はそれまでもあったが、厳格で服装まで区別するような極端な部落差別は江戸幕府がつくりだした。

②引っ越しや旅行は原則禁止され交通インフラは300年進歩せず

町人の旅行は比較的自由だったが、農民は引っ越しも旅行も原則禁止の藩が多く、交通インフラや通信も劣悪で、馬や馬車は使えず、関所も復活し、移動時間を短縮する方法もなかった。大型船建造が禁止されたので、岸から離れて航行できず瀬戸内海などを除いて客船もなかった。

「識字率が高かった」を信じてはいけない

③教育レベルは低かったし、識字率が高いのも嘘

科挙があった中国や朝鮮と違い武士は学問を軽視し、藩校が普及したのも幕末に近い時代になってから。しかも、漢学だけで九九も教えなかったので実務には役立たなかった。庶民が学べる中等学校(高校)もなかった。ヨーロッパの大学の学生が市民中心だったのとも大違いだ。

*ヨーロッパでは、学問や大学教育は市民層中心のもので、王侯貴族は軍人としての教育などを好んだ。イギリスのチャールズ国王は初の大卒の国王。ダイアナ妃のスイスの寄宿学校から保母さんというのこそ、伝統的な貴族のお嬢様の経歴といえる。

識字率が高いというのは、中国や朝鮮では数千字の漢字、日本では仮名だけができるかで計算した結果で比較しても意味がない。

一寸子花里画『文学万代の宝』(写真=Artanisen/CC-PD-Mark/Wikimedia Commons
④鎖国のために科学技術もほとんど進歩しなかった

日本人の海外渡航は全面的に禁止で、西洋のことを書いた漢籍の輸入も禁止されたので、科学技術はもちろん、それ以上に国際法や経済の知識も2世紀以上遅れることになった。

⑤鎖国のおかげで独立が保てたというのは嘘

スペイン・ポルトガルは各地に軍事拠点を確保したが、面での植民地支配は、国家未成立の地域や金属の武器がなかった中南米に限定しており、もともと日本に危険はなかった。むしろ、鎖国の結果、火縄銃の時代の軍事力のまま黒船来航を迎えたので、危うく植民地化されそうになった。

⑥武士道は明治時代になって生まれたもの

武士は戦国時代の先祖の遺族年金というべき禄を食んでいるだけに近く、軍人・官僚としての実務能力も使命感もなかった。武士道は明治になって西洋の騎士道に似たものがあったとして創造したもので、江戸時代の武士の実態とはかけ離れている。