話しやすいことを話していないか


あなたは長々と会社紹介をしていませんか?

トップセールスは顧客に感情移入して、相手が聞きたい情報はどのような種類のものかを理解している。だから初回アプローチにおける会社紹介は、相手に最低限の安心感を与える程度にとどめている。

もし最初から相手が信用してくれていると判断すれば、会社紹介すら行わない。顧客情報の収集やメリット提示を優先し、できるだけ早く具体的な話に入るのである。

対照的に売れない営業担当者が長々と会社紹介をしてしまうのは、実は話のネタがないからだ。自分が話しやすいことを話そうとして、相手が興味のない話を続けてしまうのである。しかし営業の場面においては、自分が話しやすいことではなく、相手が聞きたいことを話さなければならない。

相手が関心を示さない会社紹介を延々と続けたらどうなるか。

「もう会いたくない」

「今後、この人に会う必要はない」

そう相手に感じさせてしまうだろう。本題に入る前に顧客から嫌われて、次のステップに進めなくなってしまうのだ。こんな馬鹿げたことはない。

企業によっては「ファーストアプローチでは必ず会社紹介をするように」と営業担当者に指導していることがある。会社のルールで必ず会社説明をしなければいけない場合でも、内容と時間に注意すべきだろう。

では、ファーストアプローチ前の、相手がよくわかっていない段階での事前準備はどのようにすればよいのだろうか。

重要なのは最初に会ったとき、相手に自分と会う価値を感じさせることにある。そのためには相手がどんな内容に価値を感じるかについて、事前に顧客の情報を調べ、ある程度「仮説」を立てておく必要がある。

売れない営業担当者は顧客の情報をほとんど調べていないものだ。せいぜいホームページを斜め読みする程度で、相手のことがわかっていない状態でアプローチをしてしまう。

相手を知らなければ、漠然とした一般論しか話すことはできない。それでは顧客が「会う価値」を感じることなど不可能だ。

売れる営業担当者は事前に顧客の情報をよく調べるだけでなく、それに基づいて相手にどんなニーズがあるか分析している。

会社概要だけでなく、ホームページに掲載されているニュースリリースや会社トピックなどに目を通し、「全社的にこういう方針を打ち出したのなら、この部署にはこんなニーズがありそうだ」と感情移入を働かせ、話の内容を練っているのだ。

加えて業界情報や最新の技術動向、成功事例や失敗事例など、相手が興味を持ちそうな情報のストックをたくさん持っていれば「この人は詳しい情報を知っているプロフェッショナルだから、ぜひ会いたい」と感じさせることができるだろう。

そのためには普段から「価値を感じさせる情報」を継続的に収集し、自分なりに整理しておくことが必要である。

(構成=宮内 健 市来朋久=撮影)