会社紹介は何のためにしているのか
アポイントが取れてはじめて訪問した顧客に対し、営業担当者が最初に行うべき行動は何だろうか。
多くの営業担当者はまず、自己紹介を兼ねて会社紹介を行う。確かに初対面の顧客に対して、ある程度自社を説明する必要はあるだろう。しかし、何のために会社紹介を行うのかと尋ねてみると、きちんと答えられる人はほとんどいない。
あまり売れない営業担当者は、名刺交換を終えるとすぐに会社パンフレットを開き、延々と会社紹介をはじめる人が少なくない。
「弊社の歴史は……」
「支店と営業所の数は……」
「これまでの実績は……」
そんなふうにダラダラと、一方的に話し続けてしまう。もし自分が顧客の立場だったら、そんな話をされても「もっと聞きたい」という気持ちにはならないだろう。
ところが話している本人は、相手がうんざりしていることに気づいていないものだ。こうした事態を避けるためには、やはり行為の目的を明確にしておくことが肝心である。
営業担当者が最初に会社紹介を行う目的は、相手に安心感を与えることにある。
「決して怪しい会社ではない」
「この人から提供される情報は信頼できるものだ」
そう相手に感じさせるために行う。その目的さえ達成できればよいのだから、会社紹介はできるだけ短い時間で終え、本題に入るべきだ。長くてもせいぜい3分以内、できれば1分程度でまとめるとよいだろう。
1分や3分では会社紹介を充分にできない、と思う人がいるかもしれない。しかし、話す内容を相手に安心感を抱かせる情報に絞ればよい。
初回訪問時、基本的に顧客はこちらの会社情報をそれほど知りたいとは思っていない。顧客が相手の会社について本当に知りたいと思うのは、何か相談を持ちかける際や、実際に商品やサービスを購入するときだ。
見方を変えれば、大切な相談や取引が発生する段階になってはじめて、顧客は相手の企業が本当に信用できるかどうかを判断する必要に迫られるわけだ。
「期日通りに納入できるのか?」
「購入後のアフターサービスは大丈夫か?」
「倒産する心配はないか?」
顧客は購入が前提となってはじめてこうした情報を収集する必要が発生し、調査を行うのである。したがって、最終的な詳細提案や顧客が意思決定を行う前に、再び自社について説明を行う必要が発生する。このように営業プロセスの最初と最後で会社紹介を行うことを、私たちは「サンドイッチPR」と呼んでいる。
ただし、初回アプローチでは安心感を与えるため、クロージング前は顧客が具体的に契約を進めるためと、それぞれ目的が異なる。一口に会社紹介といっても、目的に合わせて内容を使い分ける必要があることを意識しなければならない。