なぜ質問しても答えてもらえないのか

営業アプローチのプロセス中、最も重要なのは「ヒアリング」である。ヒアリングの質が提案の質に直結するからだ。聞くべきことを聞かずに商談を進めると、いき違いや大きなトラブルが発生する恐れもある。理由がわからないまま契約を延期されたり、突然競合に負けてしまったりするのは、多くの場合ヒアリング不足が原因だ。

ところが顧客にヒアリングを行おうとしても、こちらの知りたいことを率直に教えてくれるとは限らない。

「なぜ答えないといけないんだ?」

そんなふうに断固として回答を拒否されることさえある。なぜ、顧客はあなたの質問に答えてくれないのだろうか?

その原因は、顧客がその質問に答えるメリットを感じていないことに尽きる。

「顧客のことを知りたい」

こうした気持ちは営業担当者の一方的な思いだ。ところが、顧客の立場になって考えてみると、質問に答えることは営業担当者に情報を「与える」行為である。

人が他人に情報を与えるには、「教えると何かいいことがありそう」という動機が必要である。メリットがなければ自社のことを話す気にはならない。逆にメリットがあると思えばこそ、大事な情報も与えるのだ。

売れない営業担当者は感情移入ができないため、そのような顧客の心理がわからない。その結果、いきなり「答えにくい質問」を投げかけるという過ちを犯してしまう。

「答えにくい質問」とは、核心を突いた質問のことだ。たとえばあなたが初めて訪問してきた営業担当者から、次のような質問を受けたらどう感じるだろうか。

「どちらの製品をお使いですか?」

「決定権者はあなたですか?」

突然こんなことを矢継ぎ早に質問されたら、「なんでおまえにそんなことを答えなければいけないんだ!」と憤っても仕方がないだろう。尋問でもするかのように、「答えにくい質問」を無神経にぶつける突撃記者型の営業担当者は玉砕するしかない。