公債の日銀引き受けを禁止する財政法第5条も同様だ。しかし、0.5%への変動枠拡大の前日には「日銀が入札されて国債の半分以上を当日に買い取った」とのニュースが流れた。第4条のように、一応、体裁を整えての財政法破りではない。法破りの根拠なく財政法5条を破っている。
ここでより重要なのは、先人たちが「なぜ第4条、第5条を作ったか」を深く認識することだ。立法事実(法が存在する合理性の根拠となる社会的事実)は何だったか。
「なぜ世界の主な国々は、中央銀行が政府から独立しているのか」を考えてみよう。
政府の歳出を賄うのは増税、もしくは新しく紙幣を刷って賄うのどちらかしかない。政治家は当然、国民に不人気な前者よりも後者を選択する。その結果、紙幣の刷り過ぎでお金の価値が減価し、ハイパーインフレが起きてしまった。
その悲劇を二度と繰り返さないために、世界の主たる国では中央銀行を政府から独立させた。政府から独立した日銀ができたのもその理由(西南戦争後のハイパーインフレ対処のため)。要は統合政府をいさめたのだ。
それを「統合政府で考えれば大丈夫だ」とか「中央銀行に国債を引き受けさせれば、まだ財政出動できる」などの理屈にのっとって財政赤字を拡大させた罪は大きい。
窮地に立つ日銀、円の紙くず化は近い
先日、朝日新聞の原真人編集委員が「(財政ファイナンスがもたらす弊害について)この恐るべき事態に私たちはもっと敏感に、もっと強い警戒心を働かせるべきではなかろうか」と記事で指摘した。まさにその通りだ。
「長期金利の変動許容幅を0.5%に拡大する」という日銀の決断は、金融政策の変更でも何でもない。日銀が白旗を上げつつある証左だ。
それは円の紙くず化が近いことを意味する。