浅田均参議院議員が予算委員会でした質問に対し、雨宮日銀副総裁は「日銀は1%の金利上昇で28兆6000億円、2%で52兆7000億円の債務超過」になると答弁した。巨額の債務超過である。通貨の信認はひとえに中央銀行の信認にかかっているから、日銀の巨大債務は日本経済にとっても日銀にとっても死活問題だ。
日銀にとっては存亡の危機である。0.5%の最終防衛ラインを破られると日銀に債務超過が生じる。これは世界中の耳目を集めるだろう。
すでに12月21日の米経済紙のウォールストリートジャーナルが社説で「コントロールを失った日銀」と題して、日銀のオペレーションについて触れた。
「経済の重力に逆らえないのは必然であり、それは日本にさえも当てはまる」
債務超過のニュースが世界の耳目を集めるならば日銀の信用失墜、ひいては円の信用失墜が起きる。ハイパーインフレは時間の問題となる。
ドルと交換できないローカル通貨、円暴落へ…
この影響は国債の格下げなどの次元の話ではない。
外銀の審査部が時価会計で日銀の内部を審査し、信用失墜との理由で日銀当座預金の閉鎖を決めたら日本は終わる(もっとも財政が健全な新しい中央銀行ができて新しい通貨ができれば、外資は再度日本に戻ってくると確信する)。
外資金融機関の日銀当座預金閉鎖は外国人の日本株、日本国債、為替からの撤退を意味する。すべての最終決済は日銀当座預金を通して行われるからだ。
「他の邦銀に代理を任せれば」と言う人がいるかもしれないが、日銀との取引中止を決めたら、すべての邦銀との取引も中止となる。
ドルと交換できない円はローカル通貨化し、円は暴落、ハイパーインフレだ。いくらモノがあふれていようが石ころでは売り手はモノを売ってくれない。
なぜ日銀だけ危機的と言えるのか
中銀のバランスシート規模は日本が突出している。SMBC日興証券によれば、総資産の名目GDPに対するバランスシート規模は米国34%、欧州67%に対し、日本は126%だそうだ。
中央銀行のバランスシートの負債の大部分は発行銀行券と当座預金残高だ。バランスシートが対GDP比で大きいということは経済規模に対してお金をばらまきすぎたということ。お金の価値が希薄化するのは明白だ。
他の中央銀行はコロナでお金をばらまいたのに対し、日銀は異次元緩和の開始時から、すなわち平時から財政ファイナンスでお金をばらまいてきた。ばらまいたお金が少なければ撤退は何とかなるが、ばらまきすぎると、その回収は容易ではない。
実際、それほどお金をばらまいていないFRB、欧州中央銀行(ECB)等は世界的にインフレが加速するなか、量的緩和(QE)を打ち切っている。英国中央銀行(BOE)やFRBは既にばらまいたお金の回収(QT)に入っているし、ECBは来年3月からQTに入ると言われている。