根拠には必ず「証拠」をつけることも忘れずに

さらに、「根拠」に「証拠」があることも欠かせません。証拠があるというのは、交渉相手も認めざるを得ない「事実」であることです。

相手からズレた答えが返ってきてしまう理由は、「主張」の解像度が低く、「根拠」が薄いから。あなたは自分の要望を伝えているつもりでも、上司は問題点を把握できないのです。

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相手にも同じような解釈や感想をもってもらいたいなら、はっきりとした「主張」と客観性の高い「根拠」を必ず添えて伝える必要があります。

根拠に相当する「証拠」についてもう少し詳しくお話ししましょう。証拠のレパートリーを増やしておくと、より高い説得力を保つことができます。

証拠として高い機能を持つのは、以下の両方の性質を帯びるものです。

性質① 相手がすでに知っているもの、もしくは、すぐに理解できるもの
性質② 客観性が高いもの

性質①の「相手が知っているもの、もしくは、すぐに理解できるもの」は、説得において、相手の認識から入ることの重要性を説いています。つまり、相手があらかじめ知っていて納得のできるものから前フリとしてはじめるほうが相手を説得しやすいということです。

説得したい相手が複数人であれば、できるだけ多くの人が知っている証拠を選びましょう。相手が知らない証拠であれば、理解できるようにわかりやすくかみ砕いて伝えることが必須です。

感情ではなく、事実ベースで問題点を述べる

性質②の「客観性が高いもの」は、他の誰もが「そうだ」と思える情報です。

たとえば、具体事例や歴史的な事実、格言、寓話ぐうわなどです。人名や社名といった固有名詞、数字などを使って表現します。

逆に、根拠に自分の考えや漠然とした感情・感覚のような主観的な情報を持ってきても、相手を説得することはできません。

自分が困っている際には、単に「困っています」と伝えるのではなく、事実ベースで問題点をまず整理します。そして、「○○なことが起こってしまっているのですが」と事実として起きている問題を相手に伝えるようにするのです。

以上を踏まえて、冒頭の上司とのやりとりに戻ってみましょう。

仕事量が多すぎるという相談に対し、「俺が若い頃はもっと大変だった」とズレた答えを返すだけでなく、「あの頃は~」と武勇伝まで語り始めそうな上司。この行き違いを解消するには、「主張」の解像度を上げ、「根拠」を明確に示す必要があります。