子どもが怒られたことを繰り返すメカニズム

子どもに向かって親が大声で怒鳴るのでは、逆効果ですよね。私たち親の見せるお手本が良いヒントになるどころか、子どもの全身をアドレナリンと糖質コルチコイド(ステロイドホルモン)でいっぱいにするのでは、落ち着かせるのに確実な方法とは言えません! 子どもはもっと別の燃料を必要としています。

子どもがストレスや緊張で固まってしまった状態から抜け出す時には注意が必要です。固まることでストレスが蓄積しています。

私たち親が一緒に遊ぼうと誘ったり、楽しくじゃれ合ったり、マッサージをしてあげたりして絆を回復しない限り、扁桃体が子どもの脳内で警鐘を鳴らし続けるので、子どもは何も考えることができないだけでなく、活発になったホルモンのせいで、必ずまた別のまずいことをしてしまうのです。

そんな時、親が落ち着くことが大切です。深呼吸して、自分のストレスを乗り越えることに集中しましょう。

子どもの心の声

ケンカを売る気なんて言われると、わたしがわざとママを怒らせようとしているみたい。そんなことないから、怖くなる。こんなふうに怖くなると、なぜか同じことをゆっくりもう一度してしまうの。それ以外、どうすればいいかわからない。

子どもの言動に我を忘れるのは、私たち親の反応のリモコンを子どもに渡すようなもの。自分が求めていなかった力を手にして不安になった子どもは、自分を怖がらせたことを繰り返す傾向にあります。

それは決して挑発ではありません。そうやって脳が安心を再び見つけようとしているのです。

自分を怖がらせたことを、子どもはそれが克服されるまで繰り返します。つまり、母親を激怒させた言動が再び繰り返されることになります。

なぜなら、子どもは、母親をそんなふうに激怒させた自分が許せないため、脳が、何が起きたかを特定しようとするからです。そして、それが何度も繰り返されることになります。

子どもへの怒りが収まらない親が抱える課題

あらゆるきっかけが、私たち親の攻撃性をあおる恐れがあります。私たちは子どもの言動や要求のせいで親が不安定になると考えがちです。でも、実際は、ストレスの蓄積や人間関係のもめ事、疲労、責任の重圧、子どもに頼られていることなどが親の緊張状態の原因かもしれません。

イザベル・フィリオザ『6~11歳 子どもの気持ちがわかる本』(かんき出版)

こうしたストレスのせいで我慢がききづらくなるため、子どものちょっとした失敗に対して、あるいは子どもがただそばにいるだけで、親は防御と拒絶の反応をしてしまうのです。

子どもが苦境にある時または何か要求した時の、親の脳の活動の様子を、脳の画像で観察してみました。まず親自身が子どもの頃、話を聞いて支えてもらい、かわいがってもらって安定した愛着を感じていた場合、その脳は、愛情ホルモンであるオキシトシンで満たされます。「面倒を見る」脳の分野が活性化するのです。

反対に、子どもの頃に安定した愛着を築けなかった親は、わが子に近づこうが避けようが葛藤するストレスのシステムが活性化します。脳は少しもオキシトシンを受け取りません。むしろ危険を感じ取って、扁桃体が防御反応や闘争・逃走反応のスイッチを入れてしまいます。そのため、このような親は、コントロールできない暴力あるいは冷淡な態度をとる衝動に駆られます。