調査データよりも従業員の生活実感を重視する

――その社長や会長へのプレゼンで、商品化が決まるんですか。

【小田】そうです。そこに至るまでに私の上司や他部門の責任者からの承認は下りていますので、最後のハードルになります。そのまま通ることはあまりなく、ここからさらに改良をかけることが多いですね。

ニトリ グローバル商品本部 小田貴洋さん(撮影=プレジデントオンライン編集部)

ニトリでは社内にバイヤーチームがあって、彼らが主に店頭に並ぶものを決めています。ですから、いちばん初めにそこを説得する必要があります。逆に彼らから、「こういうものが欲しい」というアイデアが出ることもあります。いずれにせよ初期の段階からお互い一緒に作っていきます。

――いろいろな部署からアイデアが出るのは、従業員のみなさんの生活実感から来ているんですか。それとも消費者調査といわれるような、消費者を集めて意見を聞いたり、SNSを定期的に解析したりしているのですか。

【小田】スマホ毛布の場合は、従業員の生活実感が基になっていますね。もちろんスマートフォンの所有率とか、ユーザーの年代などのデータは参考にしましたが。

――データより自分たちが困っていること、自分たちの生活実感からの発想なんですね。確かに、お客様からクレームがあったとしても、「なんで毛布に穴が開いてないのよ」とか、「スマホしてて寒いんだよ」とは言ってくれませんからね。

【小田】そうなんです。消費者インサイトの部分ですが、それはお客様の口からなかなか出てくるものではありませんので。

横幅が普通の毛布より10センチ長い理由

――商品開発でこだわった点はどこですか?

【小田】穴の位置や大きさにはこだわりました。それから実はこの商品は、横幅が通常140センチのところを150センチにしてあります。最初は仰向けに寝ながら使う想定だったのですが、試作品を試した人から「腕を通したまま寝返りを打ったら横幅が足りなくて背中が寒かった」と言われたので、「発売前に気が付いて良かったね」と言いながら調整しました。

ほかにもラッキーなことはあって、いちばんラッキーだったのは「スマホ毛布」という言葉を使えたことです。他社さんの権利があると商品名に使えませんから。「スマホ」と「毛布」という二つの言葉が重なるだけで、なんとなく使い方まで想像できますよね。この商品名だったからこそ、SNSで「スマホ毛布」という言葉がどんどん広がっていき、発売直後から話題になったのだと思います。