「許す」のは自分自身の幸せのため

TED(Technology Entertainment Design)という各分野のエキスパートたちによるプレゼンテーションを、無料で視聴できる動画配信サービスがあります。その中に、『許し―悲劇の後にくるもの』というタイトルで、アジム・カミサとプレス・フェリックスの二人のスピーチがあります。

TEDのステージ(写真=CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

1995年、アジム・カミサの息子がプレス・フェリックスの孫により殺害されました。ギャングの仲間入りの儀式のためです。その後、この殺人事件の加害者の祖父と被害者の父親は出会い、許すため、許されるために、深い瞑想の道を辿りました。そして、二人は今、若者が同じような悲劇に遭遇しないように共に活動をしています。

これは、とても困難な道のりであったはずです。しかし、許しがたい出来事を許した人たちは、心の平穏を感じたと言います。許すのはその行為が許しに値するからではありません。相手をいつも心の中で見張り、思い出すたびに苦しむのは、精神が消耗する行為で、自分自身を幸せにできないからです。

藤本梨恵子『いつもよりラクに生きられる50の習慣』(かんき出版)

最後に、心理学で相手を許すために行うセラピーを一つ紹介します。

まず、「自分だって、すべての人の期待に応え、すべての人の心の地雷を踏まない発言だけをしているわけではない。だから、相手を許したらどうか?」と考えます。次に「この嫌な出来事から学んだことは? この出来事が自分を成長させるとしたらどんなこと?」と、自分にとってプラスの面にフォーカスするのです。

「過つは人の性、許すは神の業」とアレキサンダー・ポープが言っているとおり、「許す」ことは難しいですが、許したほうが自分の心の安定につながります。私たちは子供の頃、誰でも努力することなく自然に人を許していました。「許さない」という行為は、大人になってからマスターした習慣にすぎません。私たちには本来、生まれながらに許す能力が備わっているのです。

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