相手に伝わるたとえ話はどうすればできるか。カウンセラーの藤本梨恵子さんは「たとえ話の極意は、縁遠いものや初めて聞くものを身近なものに置き換えることだ。難しかったり、マニアックなものにたとえてしまったりする場合は、たとえ話で嫌われる場合もある。具体的には『①主訴を考える』『②類似要素を探す』『③聞き手を理解する』の3ステップでつくるといい」という――。

※本稿は、藤本梨恵子『なぜか惹かれる人の話し方 100の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

さまざまなシャツ
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新入社員に「臨機応変に」では迷って行動できない

「やってと言ったのにやってくれない」「人の話を聞いていない」とイライラしたことはありませんか? 話が噛み合わないのは、話の抽象度と具体度が原因かもしれません。

「掃除して」は抽象的なので、「窓を拭いて」「掃除機をかけて」とお願いしたほうが具体的です。犬を具体化すると柴犬、ブルドッグ、チワワなどの種類に分類できます。反対にハンバーグ、パスタ、カレーを抽象化すると「洋食」や「料理」になります。

具体化とは、普遍的な漠然としたことを特定の1つに当てはめ、はっきりさせることです。

抽象化とは、複数の事柄に共通する要素やパターンを発見することです。

頭のいい人は抽象度が高いと言われますが、詳しくは次のような違いがあります。

具体化

①目に見える②万人が理解できる③解釈の自由度が低い④応用が利かない⑤やり方⑥実務寄り⑦実体と直結

抽象化

①目に見えない②一部の人しか理解できない③解釈の自由度が高い④応用可能⑤考え方⑥学問寄り⑦実体と一見乖離

あるマナー講師が「新入社員の方に『シャツは何色がいいですか?』と聞かれたら、半年は白シャツで通勤が無難と伝えている。『社内の人を見ながら臨機応変に』は不親切」と話していました。

経験値が少なく、判断が難しい場合や、不安が大きく「臨機応変に」では迷って行動できない場合は、具体的に伝えたほうが実践しやすいからです。