実は人間のすぐ近くに棲んでいるサンショウウオ

日本にサンショウウオが何種類もいると言っても、実際に野外で出会った経験を持つ人は少ない。

ただそれは、サンショウウオが人の近づけない深山幽谷しんざんゆうこくに棲んでいるからではない(そういう種類もいるが)。

夜行性だったり、森の落ち葉の下に隠れたりしていて、見つけることができないだけだ。

実は人間のすぐ近くに棲んでいる。その代表格がトウキョウサンショウウオだ(写真3)。

【写真3】トウキョウサンショウウオ(おとな)(出所=『絶滅危惧種はそこにいる』)

現在の東京都あきる野市で採集されたので、「東京」の名がついたトウキョウサンショウウオ。世界中でも日本の関東地方周辺だけ(群馬県、茨城県を除く関東1都4県)にしか生息していない。

両生類はその名のとおり、陸と水辺の両方を利用して生きる動物だ。

トウキョウサンショウウオは、普段は森の落ち葉の下で小さな虫などを食べて暮らしているが、3月ごろになると繁殖のために水辺に集まってくる。

湧き水でできた水たまりや沢のよどみなど、流れのない水の中で産卵する。

卵、そして孵化ふかしたオタマジャクシのような幼生の期間は水の中で過ごし、成長すると陸に上がる。

愛嬌のある顔を眺めたり、ぷるぷるの卵のうの感触を確かめたりするのは、僕にとって早春の楽しみの一つであり、風物詩だ(写真4)。

【写真4】トウキョウサンショウウオの卵のう。バナナ状の膜の袋の中に何十粒もの卵が入っている(出所=『絶滅危惧種はそこにいる』)