トウキョウサンショウウオが絶滅危惧種となった3つの理由

そんな身近なトウキョウサンショウウオだが、近年は数が急激に減り、レッドデータブックに掲載される絶滅危惧きぐ種となってしまった。

原因は3つあるが、いずれも解決が難しいものばかりだ。

第1に、宅地開発や道路建設などによってトウキョウサンショウウオの生息地そのものがなくなってしまったこと。

高度経済成長期以降、サンショウウオたちの棲む場所は急激に減ってきた。そして現在、破壊のスピードはゆるくなっているものの、終わってはいない。

第2に、里山の手入れがされなくなったため、成体(おとなのサンショウウオ)の生活場となる雑木林や産卵場所となる水場が荒れてしまったこと。

さらに最近ではゲリラ豪雨によって斜面の土砂が流され、水場が埋まってしまうことが頻発している。

これだと、サンショウウオは卵を産むことができなくなってしまう。

第3に、外来種によって食べられてしまうこと。その外来種というのは、北米〜中米原産のアライグマだ。

これがまた、サンショウウオたちにとっては最凶とも言える天敵なのだ。

牙をむくアライグマ
写真=iStock.com/tomrejzek
アライグマの被害を受けた生き物の一つがトウキョウサンショウウオ(※写真はイメージです)

アライグマは死神とも言える存在

アライグマは水辺が大好き。水の中に前脚を突っ込んで獲物を探し、何でも食べてしまう。

トウキョウサンショウウオは爪も牙も持たず、毒もない。動きもゆっくりで、狙われたら何の抵抗もできない。

一つ不思議なのは、食べ残すことだ。

アライグマはサンショウウオやカエルの一部だけをかじって、残りをポイッと捨ててしまうことがある。

なぜそんなことをするのかわからないが、殺しておいて全部食べないというのは、もったいない感じがしてちょっと腹が立つ。

また、最近の観察では、アライグマがトウキョウサンショウウオの卵を食べることもわかってきた。

開発で棲み場所を追われ、人間社会の変化や気候変動で産卵場所が減る中、そこに追い打ちをかけるアライグマは、トウキョウサンショウウオにとって死神とも言える存在ではないだろうか。

水辺のアライグマ
写真=iStock.com/Gerald Corsi
アライグマは死神とも言える存在(※写真はイメージです)

ただし、そのアライグマも人間にもてあそばれた被害者であることは忘れてはならない。

アライグマは、生じる悪影響の大きさから、環境省によって「特定外来生物」に指定されている。