「家族葬」が拡大する納得の理由

コロナ禍で進んだ葬儀の小規模化と単価下落が定着し、長期的になだらかな縮小傾向が続くと見ているのだ。寺院と同じく葬祭業界も「多死社会」を前にして順風満帆ではないようである。

誤解されることが少なくないが、小規模化も低価格志向もコロナ禍によって起きたわけではない。「家族葬」のようなコンパクトな葬儀は、コロナ禍前から利用が拡大していた。その背景には超高齢化と人口減少がある。

要因の一つは、職場の人間関係が変質し、企業が社員の親族の葬儀に関与しない傾向が強くなってきたことだ。

かつては、生前の故人と全く交流がないにもかかわらず勤務先の同僚の身内というだけで参列したり、部署ごとに香典を集めたりということが当然のように行われていた。受付や会場までの道案内も、大半は職場関係者が担っていた。

しかしながら、いまはどの企業も多くの従業員を葬儀のために動員する余力はない。仕事が高度化したことや、転職する人が増えたこともあって職場から家族的雰囲気が消えたこともある。このようにして会社からの参列がなくなると会葬者は少なくなる。

あえて大きな葬式をする必要がなくなったということだ。

地域の結びつきが強く残っている地方は別として、大都市などでは身内以外に葬儀を知らせない人が増えた。近所づきあいが希薄化したこともあるが、親族の死を「プライベート」ととらえる価値観が広がってきているのである。死亡した事実すらすぐに公表しない人も増えている。「香典返しが面倒」という理由で受け取りを辞退する人も多い。こうした価値観は定着していくだろう。

火葬のみは「本音を言えばいや」だけど…

身内だけの「家族葬」どころか、宗教儀式を行わず火葬する「直葬」を選ぶ人も珍しくなくなってきている。

公益財団法人全日本仏教会と大和証券株式会社による「仏教に関する実態把握調査(2020年度 臨時調査)報告書」によれば、「直葬をしたことがある」との回答は7.4%だ。1割弱が選択しているのである。「本音を言えばいやだ」と否定的な人が47.8%いる一方で、「効率的だと思う」が56.6%、「今後もすると思う」が35.6%となっている。

出所=『未来の年表 業界大変化』より