「直葬」費用は「家族葬」の3分の1
「小さなお葬式」のブランドで知られるユニクエストの調査(2022年2月~5月)によれば、過去1年以内に行われた葬儀の形式は「直葬」が13.3%で「一般葬」(19.5%)との差は小さい。葬儀費用の全国平均は「一般葬」の約191万円に対し、「家族葬」は約110万円、「直葬」は約36万円だ。
コロナ禍にあって多くの人の意識に変化が生じたという側面もあるが、今後「直葬」が普及していくと、葬儀業の市場規模は一層縮むこととなる。新規参入が活発なだけに、さらなる低価格化が進むことも予想される。こうなると、顧客が増えても思うように利益が上がらなくなる。
このままでは地域格差がどんどん広がる
葬儀業が「多死社会」という大きなビジネスチャンスを十分に生かし切れないのは、業界特有の事情もある。
葬儀では、亡くなった人の居住地近くの葬儀社や斎場を利用することが一般的である。ご遺体を遠方まで運ぶことは困難であり、火葬場は大半が公営で周辺住民は割安な料金で利用できることが多いためだ。要するに、葬儀業とはローカルビジネスなのである。
営業で他地域を開拓するわけにもいかず、葬儀社が立地するエリアの人口が減れば市場も縮小する。日本全体の死亡数の増加に応じて、どの地区も平等にマーケットが拡大するとはいかないのである。これでは、全国展開していない葬儀会社は国内マーケットの縮小に悩む他業種の企業と何ら変わらない。
高齢者人口がすでに減少している地域に立地している葬儀社の場合、全国マーケットを対象にできる他業種の企業よりも早く経営が厳しくなりかねない。そうしたことが想定されるようになれば、高齢者が増えて成長が見込める大都市などへと拠点を動かすことになるだろう。
葬儀件数の地域差は大きい。大都市圏では火葬の日まで遺体を預かる「遺体ホテル」というニュービジネスが成り立つことでも分かるように、“火葬待ち”が起きるところもある。葬儀件数の地域差がさらに拡大したならば、将来、人口激減地区から葬儀社が相次いで撤退して葬式を執り行うだけでも一苦労というところが出てくるかもしれない。