指示どおりに作業できることは、スタート地点に立てただけ

羽物俊樹氏

まず、誤解されないように補足すると、先の上司は作業をこなせるようになった新人を、評価していないわけではありません。むしろ、指示した作業をこなせるように「成長した」と評価しています。評価した上で、さらに「次のレベルに進め」と言っているのです。

コンサルタントという人種は、大概、自分に対して厳しく、部下に対しても厳しく接する傾向にあります。それは、厳しく接することが、当人の成長に寄与すると思っているからです。特に、大きく成長しそうな「可能性を感じる」部下であれば、期待をもって鍛えようとし、厳しさはより一層、増すことでしょう。

さて、「作業」についてです。

新人コンサルタントに指示される作業とは、どんなものでしょうか?リサーチ系の仕事であれば、企業の統計データを集めて、表やグラフを作ること。業務系の仕事であれば、ヒアリングにもとづき、業務フローを作成すること。IT系であれば、クライアントの要望を整理したメモを作成すること。

このような作業は、コンサルティングサービスのあくまで入り口でしかありません。統計データを集めて表やグラフを作っても、それだけで変革は進みません。データや事実の裏にある重大な事象が何なのか洞察し、仮説をたて、クライアントとディスカッションしながら、変革のシナリオを練っていく。データや事実を集めるのは、そのスタート地点に立つための作業なのです。

上司に指示されて作業していた新人コンサルタントは、スタート地点に立つための作業をしていただけです。最初は満足な作業ができなかったのですから、スタート地点に立つことすらできなかった。それが、ある程度できるようになったということは、スタート地点に立てる資格は得た。コンサルタントとしての能力を発揮するスタート地点です。

ところが、指示された作業ができるようになったことで満足してしまった。もっと先に進めるようになったのに。それでは怒られるのもしょうがないです。