いくら同社がデジタル化を推し進めたとしても、アジアの市場でECが同社の成長を牽引する姿を私はイメージしにくい。

実際ファーストリテイリングも、「出店が成長のエンジンである」と述べている。

であれば、私が再三述べているように、①海外工場を買収し垂直統合すると同時に、②ヒートテックのような売れ筋の定番商品は、例えば空港や駅ナカなどに自動販売機を設置し売ればよい。

米国ではすでにトライアルをしているようで、いずれ日本でも本格的に始まるだろうと思う。

EC・デジタル化の遅れに懸念も

一方で、「情報製造小売業」に業態を変革させるという「有明プロジェクト」は、走り出して何年も経つが、具体的な成果が私には見えない。

例えば、2021年秋冬の「+J」では、明らかにMDの「価格」と「投入量」を、読み間違えているように見える。

本来、こういうことが起きないようにするための「有明プロジェクト」ではなかったのだろうか。

同社は商社を外し、原価を引き下げたが、21年8月期には広告宣伝費を増やし、これからも増やしていく方針を明らかにした。

だが、もはやユニクロを知らない日本人はいないし、テレビに流れるCMも明らかに「コーポレートイメージ・チェンジ」のためのもので、具体的な商品プロモーションをするわけでもない。この広告費の意図が何なのか、これも私には不明である。

加えて、「これからの敵はGAFAMとなる」という柳井氏の有名な発言も、具体的にどのようなリスクを想定しているのかが見えない。

そもそも「ライフウエア」とは何なのかも、相変わらず抽象的なままだ。

あれだけクリアに、そして、合理的にアパレルの常識を打ち破ってきたファーストリテイリングの根本が見えにくくなっているように思う。

写真=iStock.com/TonyBaggett
ファーストリテイリングの根本が見えにくくなっている(※写真はイメージです)

とはいえ、現実的には万が一にでも同社の経営が傾くことはあり得ないし、国内に比肩する企業もない。

上記はあくまでも、これまでの爆発的な成長がこの先見込めなくなるかもしれないリスクについて言及しているに過ぎないことを、お断りしておく。