ただし、21年8月期のファーストリテイリングのEC化率は18%である一方、ZARAの22年1月期のEC化率は25.5%と、ユニクロを上回っている。

これは、店舗を成長の柱に据えるユニクロと、ECの拡充、店舗と融合した顧客体験を強く推進するZARAの違いと言える。

それでも、今後マーケットが拡大するアジア、特に中国において、ZARAがファーストリテイリングの後塵こうじんを拝していることは否定できない事実だ。

ZARAがしかけるゲームチェンジ

ZARAはいずれ売上ではファーストリテイリングの後塵を拝することになるだろう。

しかし、それが彼らの負けを意味するわけではない。

彼らはおそらく「ゲームのルール」を変えて、再び「アパレルの王」の座に君臨するからだ。

そのゲームチェンジとは、具体的にどのようなものか?

それは「環境との共存」でありESG経営という、新しい競争軸だ。

ZARAは今後、北欧のH&Mなどとともに「環境との共存」の道を選び、単なる売上拡大を目指す営利企業から、「理念を持つ成長」へと舵を切るだろう。

ZARAは「環境との共存」の道を選ぶだろう
写真=iStock.com/Firn
ZARAは「環境との共存」の道を選ぶだろう(※写真はイメージです)

すでに欧州ではH&Mなどを中心に、HIGG indexという環境ルールが作られている。日本からはアダストリアやファーストリテイリングが参加するなど、全世界では数万社が参加しているようだ。

そうした新しい競争軸において、「売上ランキング」という指標は無意味なものになりかねない。

数年後には、ファーストリテイリングやシーインのような、アジア市場に強い企業が、「売上」においてはトップ企業となっているに違いない。

だが、その企業を勝者と呼べるかどうかは、おそらく意見が分かれることになるだろう。