順位よりも「日本人スゴイ」がニュースに

普段はサッカーにそれほど興味のない日本人が、なぜ代表チームが「世界のひのき舞台」に立った途端、強烈なサッカー熱を発揮するのかというと、「日本」に勝ってほしいからだ。では、なぜ「日本」に勝ってほしいのかというと、世界に「日本ってすごいな」と認めてもらいたからではないのか。

実際、このような傾向は戦前からある。例えば、1935年2月、阪上安太郎という日本人競泳選手がオーストラリアのシドニーで水泳大会に出場した。阪上選手は風邪を引いて高熱を出していつもの実力が出せず結果は3着だったが、その結果よりもメディアが大きく取り上げたのは「阪上の大和魂 濠洲で絶賛」(読売新聞1935年2月9日)というエピソードだ。

「レース後阪上選手の病気を傳え聞いた濠洲の人々は日本人の責任感の強いのに絶賛を浴びせている」(同上)

なぜ試合内容よりも「日本人が褒められた」ということがニュースになっているのかというと読者、つまりは当時の日本人がこのような「日本人スゴイ」話が大好物で、新聞の売れ行きにも影響を与えるからだ。

これは87年を経た今回のワールドカップでも同様で、サポーターがゴミ拾いをしたとか、代表チームのロッカーがピカピカだったということが大きなニュースになっているのは、われわれ日本人は外国人に褒められる話が大好きだからだ。では、なぜ好きかというと、「強すぎる承認欲求」を満たしてくれるから、と考えればすべて辻褄が合う。

世界と比較してわかる日本の若者の「異常」

「いい加減な話を憶測でしゃべるな! ワールドカップで“にわかファン”が増えるのは、メディアでサッカーの魅力が繰り返し伝えられるからだろ」という感じで、不愉快になられる方も多いかもしれないが、実はこの説にはちゃんと根拠がある。

実はあまり語られることはないが、われわれ日本人は「1人ぼっちだと自己肯定感が異常に低いが、“日本人”という集団になると急に自信を取り戻して堂々とする」という世界的に見てもかなり珍しい気質をもった国民なのだ。

それがうかがえるのが、内閣府が2019年に公表した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査(平成30年度)」である。これは13歳から29歳を対象に、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、韓国、そして日本の若者にさまざまな意識調査を実施して比較をしたものだ。

ここではさまざまな「日本の若者」だけに見られる特徴が浮かび上がったのだが、その中でも「異常」というほどの顕著な違いを見せていたのが、「圧倒的な自己肯定感の低さ」だ。