もう一つが、「仕事をしないのはもったいないと思っている人」。大企業を中心に、女性は出産しても職場に戻ることが普通になってきた。また、一度は仕事を離れても、5年、10年もたつと、別の仕事に就く場合もある。中村さんのようなケースだ。

すると、彼女たちの一部が「ずっと専業主婦なのは、もったいない」との認識になる。正義感が強い場合には、「社会に貢献していない。あなたが専業主婦でいることで女性の地位が上がらない」との主張につながる場合がある、との見立てだ。中村さん自身、同性異性問わず、「もったいない」「家の中でくすぶってるなんて非生産的だ」と言われた経験がある。

だれかを攻撃したくなる「怒りの根源」に目を向けるべき

専業主婦、働く女性の両者を濃密に体験している中村さんは、お互いがお互いを攻撃し合う現状を、自身の体験も踏まえこう捉えている。

「あなたが怒りを持っているものが、何なのかを深掘りしてみては。それは専業主婦に対してとか、働く女性に対してとかではないはずです。他人に怒りが向くときは、実は自分の中に消化できない怒りや悲しみ、苦悩があるのだと思います。

働く女性ならば、子育てがうまくいってなくて、『専業主婦だったらよかったのに』と思っていませんか。専業主婦ならば、働くことへの夫の無理解や非協力な態度があるかもしれません」

自分の怒りの原点をこそ見つめてほしいと訴える。

筆者撮影

冒頭で紹介した、専業主婦の労働を時給1500円で24時間換算することをめぐるTwitter上の大論争はどう受け止めているのだろうか。

「う~ん。英語や音読を教えたら私は時給1500円はもらえるでしょうけど、家事業務だと600円ぐらいかな」

笑いながらこう語った後、中村さんは次のように締めた。

「私は元々は専業主婦に憧れとは言わないまでも、“楽しそう”とポジティブに捉えていました。でも、実際経験して、家事で絶対に100点とれないと思った。だからせめて稼ぐことで家庭を支えようと思ったんです」

「みんな、少ない文字情報で判断しすぎていると思うんです。たんに嫉妬したり恨んだりしてもブスになるだけ。相手をたたくのではなく、自分の怒りの根源に目を向ければ、もっと機嫌よくいられると思うし、そのほうがずっと健康的な日々を送れると思います」

(聞き手・構成=富岡悠希)
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