言葉を扱う仕事をしていたのに、子ども向けの日本語しか使っていない毎日にも飽きた。大人同士で交わしていたやりとりが出てこなくなっていく。例えば「バスがとまる場所」とは言っても、「バス停」が表現できないという具合だ。

またそのころから、「家事育児を100%やる」という考えもやめたという。もともと整理整頓にそこまで気を使うタイプではなく、苦手な家事を毎日完璧にこなすことはストレスだった。加えて、子どもが熱を出してももう1人いるから、自分が倒れるわけにはいかない。家事はせいぜい7割ぐらいでいいんだと思えるようになると気持ちは楽になったが、よりいっそう「社会とつながりたい、仕事がしたい」と強く思うようになった。

保育園には入れず、月収5万円のアルバイトしかない

子どもが1歳になると、反対する夫と義母を説得し、時給単位のリサーチアルバイトや、友人の手伝いなどから仕事を始めた。都内に出るため人生で初めて満員電車に揺られた際は、「都心で働く人は毎日こんな思いをして通ってたんだ。夫、偉いな」と痛感した。

中村優子さん
撮影=プレジデントオンライン編集部

第2新卒で採用面接も受けてみたが、子どもが2人いると分かったとたん、不合格となった。正社員を募集している職種は未経験、もしくはアナウンサーのキャリアと親和性のある職種は営業や秘書などに限られ、保育園の送迎に間に合わない。結局正社員は断念し、アルバイトとして月5、6万円を稼ぐのが精いっぱい。20代後半の年収は60万円を超えるのがやっとで、キャリア形成に苦しんだ。

「専業主婦の自分はもう社会に必要とされていないのか」と絶望することもあった。同時に「このまま家庭に入っていても、私は主婦として十分な成果をあげられないだろう」という危惧もあった。

そこで、もう一度社会復帰するために2つのことを心がけた。まずは「元アナウンサーという肩書にしがみつかない」こと。2年の局アナ経験だけで戦える世界でないことはよくわかっていたし、「家庭内でも、外でもなるべく機嫌よくいる」ことも心がけた。不機嫌が顔に出ると、仕事の縁にも恵まれない。そして自分を頼ってくれた場合、手に余るようならば必ず誰かを紹介した。

こうした姿勢がご縁を呼び込んだのだろう。30代半ばに差しかかると、徐々に好転し始めた。

2017年から、今も続ける「本Tube」での著者紹介の仕事に出会った。作家エージェント会社の手伝いも始めた。コロナ禍では作家・林真理子さんのYouTube「マリコ書房」を開設し、相方MCを務めている。

専業主婦をバカにする「2つの心理」

アナウンサーから専業主婦へ、アルバイトを経て会社代表に。そんな中村さんの目に「専業主婦vs.共働き論争」はどのように映っているのだろうか。

なぜ、共働き女性は専業主婦をバカにするんでしょうか? と尋ねると、中村さんは友人や同僚の反応を見ながら、専業主婦に対する働く女性の認識には2パターンあると分析した。

一つ目が、「専業主婦がうらやましい人」。フルタイムで一生懸命、仕事をこなしているのに満足な収入や望むようなキャリアが得られない。そのため「専業主婦は家で楽をしている」と攻撃する。