アメリカドラマで「ラテン語の知識」がよく出てくるワケ
例えば実務関連でも、法律用語や医学用語の多くがラテン語やギリシャ語など古典語の「造語要素」から成り立っている。アメリカの法廷ものや医療ものの映画、ドラマをみていると、医者や弁護士がラテン語、ギリシャ語の知識を自慢げに披露する場面が出てくるが、あれは教養を〈衒って〉いたのではなかったわけだ。
◎てらう【衒う】(己が才能や力量、学識、教養についての自慢を)言動にちらつかせる。みせびらかす。ひけらかす。誇示する。「才を衒う」「博学を衒う」「奇を衒う(=奇抜な行為をみせびらかして、目立とうとすること)」
※『広辞苑』によれば、「衒う」は「照らふ」が原意であり、そこから「かがやくようにする」の義が導かれたらしい。自分を「かがやくようにする」こと。サザンオールスターズの『C調言葉に御用心』に「照らう元気もありゃしもないのに そうとうクールでいれるのも妙ね」という歌詞がみえる。
「衒う」の名詞形は「衒い」で、ひけらかすことだが、〈衒いのない〉という慣用句で知られる。
◎衒いのない 飾り気のない。表面をつくろっていない。気取ったところのない。「彼の衒いのない性格にひかれた」
※先日、ラジオのパーソナリティが、「衒いのない」を「照れのない」の意味で使っているのを聴いた。この「照れ」は恥ずかしげ、恥じらい、気おくれ、臆面などの意。「照れのない」は「恥ずかしげがない」とか「臆面もない」ということだ。「衒いのない」とはまったく違う。
また「衒い」の「衒」という字は、音で「げん」と読む。〈衒学〉という熟語がある。
◎げんがく【衒学】学をひけらかすこと。知識や教養のあることをみせびらかすこと。ペダントリー(“pedantry”)。「あの男の衒学的な態度には〈辟易〉した」
※作例にある「衒学的」は英語ではペダンティック(“pedantic”)。
◎へきえき【辟易】うんざりすること。閉口すること。嫌気がさすこと。げんなりすること。「彼の鈍感さには辟易する」「京都の夏の暑さには辟易した」