記事によるとカタールの財務相は2017年、ホテル、スタジアム、空港の拡張などインフラプロジェクトに対し、同国が「毎週5億ドル」を投じていると発表した。2010年末にホスト国に選定されてから現在までに、推定で2200億ドルが費やされたと同誌は指摘している。2018年のロシア大会と比較すると、実に15倍以上という予算規模だ。
建設ラッシュが生んだ移民労働者の大量死
ホスト国への選定を受け、カタールは建築ラッシュに沸いた。完成を急ぐ7つのサッカースタジアムをはじめ、ホテルや空港など国内各所の建設現場に多くの移民が動員され、多数が命を落としている。「史上最も死者を出したW杯」といわれるゆえんだ。
ドイツ国営放送のドイチェ・ヴェレは、「人権活動家、政治家、ファン、そしてメディアは、このサッカー大会に関連していると疑われる死亡例が6500件、ひいては1万5000件あると語っている」と報じている。
前者の根拠となっているのが、英ガーディアン紙による2021年2月の報道だ。同紙は各国の統計を集計し、「ワールドカップの開催決定以降、カタールでは6500人の移民労働者が死亡した」と報じた。
この数字は、インドやバングラデシュなど南アジア5カ国からカタールへの移民労働者のうち、W杯開催決定から2020年までの10年間で死亡した人数をまとめたものだ。
フィリピンやケニアも多くの労働者をカタールに送り出している国であるが、これらの統計は含まれていない。このため、実態はさらに膨らむ可能性がある。カタール政府による統計は、さらに大きな数を示している。
国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルは2021年8月、「(カタール政府の)公式な統計によると、2010年から2019年までのあいだに、1万5021人の非カタール人が同国で死亡している」と指摘している。
米人権NGOの「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」でグローバル・イニシアチブ責任者を務めるミンキー・ワーデン氏は、米独立系ラジオ局「パシフィカ・ラジオ・ネットワーク」の番組に出演し、「ことによるとこれは、史上最も死を招いた大規模な競技大会です」との見方を示している。
炎天下の労働、時給は125円
各紙はカタールにおける移民労働者の悲惨な実態を報じている。英サン紙は、ドーハ近郊の計画都市・ルサイルの例を紹介している。
三日月型の人工島が浮かぶこの地区には、カタール大会に向けて新設された7のスタジアムのひとつであり決勝の舞台ともなる「ルサイル・アイコニック・スタジアム」が構える。カタールの未来像を示す象徴的な都市だ。