「最も高額なW杯」から「最も死を招いたW杯」になった

FIFAワールドカップ(W杯)・カタール大会が現地時間11月20日、熱狂的な声援を受けながら開幕した。12月18日の決勝まで、全32チームが全64試合の熱き戦いを繰り広げる。

一方で、中東初のホスト国という特性上、気候や文化の差異に起因する懸念の声が多く上がっている。猛暑の夏場を避け初の冬季開催としたまではよかったものの、異例の日程に負担を強いられる形でトップクラスの選手の欠場が相次いでいる。

酷暑が影響を与えたのは、選手ばかりではない。オイルマネーを誇示するかのようにそびえる大会会場や瀟洒しょうしゃなインフラの裏には、炎天下において搾取的な労働条件で酷使され、命を落としてきた移民労働者たちの悲惨な物語が潜む。

大会総額30兆円とも報じられ「史上最も高額なW杯」と評されるカタールW杯は、いつしか「最も死を招いた大会」とさえ報じられるようになった。

W杯決勝が行われるルサイル・アイコニック・スタジアムの建設現場で働く作業員
写真=AFP/時事通信フォト
W杯決勝が行われるルサイル・アイコニック・スタジアムの建設現場で働く作業員(2019年12月20日、カタール・ドーハ近郊)

毎週5億ドルを投入、予算規模は前回の15倍以上

カタールの面積は1万1400平方キロほどであり、東京・千葉・埼玉を合わせた程度の小さな国だ。そこに外国人居住者を含め約280万人の人口、すなわち東京都の5分の1ほどの人々が暮らしている。

同国の急激な成長を支えているのは、天然ガスや石油などの資源だ。英BBCは、世界の石油埋蔵量の13%をカタールが握っていると報じている。

豊富なマネーに裏打ちされ、カタールW杯には巨額の予算が投じられてきた。米『フォーブス』誌は、「史上最も高額なW杯」だと述べている。