本当の頭のよさとは何か

ただし、現代はただ知識を集めるだけでは差別化できない時代ともいえます。そうした意味では、単なる知識人ではもう古い。これからの時代に評価されるのは、知識人ではなく、思想家です。AI(人工知能)にも代替しえない思考の深さや多様性を担保できるかどうかが、ビジネスパーソンとして生き抜いていくためのカギとなります。スマホで情報を集めるのはもちろん大事ですが、1つの情報では足りません。思考の材料として考えるならば、1つの事象について10個の情報を集め、それを総合判断して自分だけの答えを出すことをゴールとしたいものです。

検索ですぐにヒットするネットニュースやSNSの投稿の多くは、ごく一般的な多数派の意見です。変化の時代に生きる私たちは、そのような当たり前の答えに安住してはいけません。ネットニュースはあくまで、自分の意見を形成するための材料としてとらえるのがよいでしょう。

「スマホは『なければ困る』から『あれば便利』への意識改革を」(撮影=八木虎造)

また、スマホは私たちにとって、なければ困るものだという前提も疑うべきです。現実問題として、スマホなしの暮らしが成立するとは思えません。ですが、私たちの生活や行動がスマホに支配されている現状に疑問を感じるなら、思い切って遠ざける覚悟も必要です。

たとえば、スマホのない時間を意図的につくってみる。歩く、食べる、飲む、話す、聞く。こうした人間の日々の活動に本来スマホは必要ありません。こうした行動すべてが「スマホをしながら」になっている人もいますが、それこそスマホ依存の典型的な姿です。どれもスマホがなくてもできるどころか、スマホがないほうがより楽しく、よりパフォーマンスが高くなります。

仕事の呼び出しが頻繁にあるから、スマホを持ち歩かないといけないという人も、せめて休日ぐらいは、スマホを持たずに家を出てみてはいかがでしょうか。1日に2〜3時間だけでも結構です。休日の街歩きにスマホは必要ありません。スマホの小さい画面を離れ、広々とした現実世界に目を転じてみると、その情報量の豊かさに圧倒されます。驚いたり笑ったり感動したりと、ネット上では得られないみずみずしい心の動きがよみがえります。誰もコンタクトしてこない、誰の視線も気にしないで済む時間に、この上ない自由を感じるはずです。

スマホは持ち主の要求をいろいろ叶えてくれる、『ドラえもん』の秘密道具のようなツールではあります。しかし、その機能の一つひとつが本当に「なければ困る」ものなのか、「あれば便利」というレベルのものなのか、そこは吟味して扱ってもらいたいものです。

仕事先ですばやく情報収集するには、スマホは「なければ困る」かもしれません。でも、よくよく考えてみれば、スマホの小さい画面は大量の情報を扱うには不向きです。であるなら「スマホで検索するのは外で、家で調べものをするときはパソコンで」と使い分けることができるかもしれません。そうしてスマホの出番は困ったときだけ使うと決め、スマホから離れる時間を意図的に増やしていく。スマホは「なければ困る」ものではなく「あれば便利」なもの。脱スマホ依存は、この割り切りから始めてみましょう。

(構成=東 雄介 撮影=八木虎造 図版作成=大橋昭一)
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