「自分で考えてから相談して」は、なぜいけないのか

質問や相談を受けたときにも、まずは「質問ありがとう」「相談ありがとう」「確認ありがとう」と受け止めて、相談してくれたことを歓迎してください。

ここで「自分でどうしたらいいかをまず考えてから相談してね」という実はNGな接し方についてお話ししておきます。

「NGなの?」と驚かれる方もいるかもしれません。少し前までは「若手の問いにすぐ答えると、考える機会を奪ってしまう。まずは考えさせること」と説かれていたものです。

しかし、まずは相談そのものが増え、そのうえで「私は○○だと思いますが、どうでしょうか?」と相談の仕方が上手になっていくというステップを踏んだほうがうまくいきます。

人材育成にはまずは相談の「量」。徐々に「質」の向上を目指すということです。

また、型が決まっていて「正解」を教えたほうが速いもの(例えば、社内ルールや名刺交換のマナーなど)は、ただ正解を伝えたほうが効率よく学べます。

正解がなく、思考したほうがよいものも、知識や経験がないなかで闇雲に考えるよりも、一緒に考えるというステップを挟んだほうが、より速く成長できたりするものです。

「相談してくれてありがとう。一緒に考えようか。私だったら、これとこれが大事なことだから、こんな風に考えるかな~。○○さんはどう思う?」と受け止めて、考え方を提示したり、「じゃ、今の話をもとにたたき台つくってみてね」とフォローしていったりするといいでしょう。

写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

発言しやすい場をつくる大切な因子

×「そんなのムリでしょ」
○「その視点はなかった! 詳しく教えて」

メンバーから新しいアイデアが出てきたときは、この「おかえし言葉」を使ってみましょう。

「常識」にとらわれず、メンバー一人ひとりの強みや個性、新しい視点や発想を受け入れ、「まとはずれ」をむしろ歓迎する“新奇歓迎”の因子は心理的安全性をつくる1つの要素です。

もしあなたが何かを提案して、「そんなの無理に決まってる」と頭ごなしに否定されたら……。

「せっかく発言をしたのに……」「これからは余計なことはしないで、黙って指示されたことだけやっておこう」という感情が湧いてくることでしょう。

このように自分の考えやアイデアが潰されたと感じると「新奇歓迎」因子は低下してしまいます。

「発言そのものが歓迎される」「新しい視点・アイデアが歓迎される」チーム、いわば「新奇歓迎」因子の高いチームは、メンバーが発言したあと「発言してよかった」と感じられる「おかえし言葉」であふれています。

この「その視点はなかった!」はそんな「おかえし言葉」の代表格です。

さらに「詳しく教えて」のひと言をそこにつけ足すことで、メンバーは出したアイデアを、思いつきを超えてより深く考え始めます。単なるアイデアが実現可能な解決策になるかどうかの分かれ道なのです。