ローカル線では磁気券がまだまだ根強い
地方ではICカードの導入は限定的だ。JR東日本の場合、首都圏以外で導入されているのは人口約100万人の仙台市都市圏、約80万人の新潟市都市圏のみである(ただし首都圏エリアは一部、山梨・長野・福島を含む)。というのもICカードシステムは非常に高価であり、利用が多い都市部では元が取れるが、ローカル線に入れられるような代物ではないからだ。
JR東日本が作り上げたSuicaシステムは非常に複雑かつ洗練されたものだった。Suicaのサービスが始まった2001年当時、高速で安定した通信網が整備されていなかったことから、「ICカード」「端末(自動改札機など)」「ステーションサーバ」「センターサーバ」がそれぞれ運賃計算したデータを保持し、定期的に同期することで情報の同一性を保つ「自律分散システム」として構成された。
これは高い安定性、信頼性を持つ仕組みであったが、導入から20年が経過して高速かつ安定した通信が可能になり、すべての処理をセンターサーバで一括して行えるようになった。いわゆるクラウドコンピューティングである。
仕組みは「○○Pay」と同じ
クラウド化によって駅に大規模なサーバは不要になり、また運賃改定時に自動改札機を改修する必要もなくなる。これにより、以前から利用者が少ないエリアにもSuicaが導入可能になる。
JR東日本は2021年4月、従来は自動改札機側にあったSuicaの主要な機能をセンターサーバに集約する「クラウド化」を進めると発表しており、この新たなSuicaシステムを2023年春以降、青森エリア、秋田エリア、盛岡エリアに導入予定だ。それでもSuicaを導入できないエリアはQR乗車券で対応し、磁気券を全廃することになるだろう。
Suicaのクラウド化によりICカードの役割は大きく変わる。ICカードの中にデータを持たせる必要がなくなり、カードは利用者を識別する「割符」になっていくのである。センターサーバだけで成立するのかと思うかもしれないが、やっていることは「○○Pay」と同様だ。
そしてそれはQRコードも同様であり、それこそがQR乗車券の完成形だ。