地方の鉄道は乗客が少なく、赤字続きのローカル線がある。鉄道アナリストの鐵坊主さんは「これまでは都市部の路線や新幹線の収益で、地方ローカル線の赤字を穴埋めしてきたが、批判の声は多い。廃線してバスに転換するにも、小さな自治体は補助金を出す余裕がなく、赤字のまま走らせている」という――。
※本稿は、鐵坊主『鉄道会社 データが警告する未来図』(KAWADE夢新書)の一部を再編集したものです。
「都市部の路線で赤字ローカル線を穴埋め」が不可能に
国鉄分割民営化から30年以上が経ち、社会は大きく様変わりし、あらゆる面において新たな枠組みが必要とされている。総じていえるのは「日本の鉄道は縮小傾向にある」ということだ。赤字ローカル線の廃線や需要の減少が相次いで報じられている。
国鉄分割民営化が行なわれた1987(昭和62)年当時、日本の人口は右肩上がりだったが、少子高齢化により、現在は減少している。さらに、都市部への人口集中、地方の過疎化も問題となっている。その結果、地方鉄道の収益性は悪化の一途をたどっている。
新型コロナ禍により、都市部や新幹線の収益が著しく減少し、日本の鉄道会社の収益構造にほころびが生じている。
これまでは都市部の路線や新幹線の収益で、地方ローカル線の赤字を穴埋めしてきた。収益性の低い路線を、高い路線で補塡するという「内部補助」の考え方である。
しかし、この「内部補助」には、批判も多い。
国土交通省で開催された、地方ローカル線の今後のあり方を考える「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」では、「満員電車で通勤する乗客の犠牲の上に、地方ローカル線は成り立っている」と、否定的な意見があったという。