鉄道は長距離移動が前提
鉄道路線は明治期や大正期に建設されたところが珍しくない。そうした路線はカーブが多く、速度を上げづらいため、移動に必要な時間が長くなる。
一方、近年建設された高速道路は最短距離を結ぶルートをとっており、移動に必要な時間も短くなる。所要時間において、鉄道が厳しい戦いを強いられている理由だ。
地方ローカル線でも、かつては急行列車が多数運行されていたが、そうした列車のほとんどは高速バスとの競合に敗れ去り、廃止されていった。
地方ローカル線は多くの乗客を失っただけでなく、急行料金や指定席料金という収益をも失うことになり、客単価が減少してしまった。
その結果、地方ローカル線は短距離の地域輸送に特化した輸送手段となってしまった。これがそもそもの問題なのである。
鉄道を無理に維持すること自体、本末転倒なのかもしれない
都心部に住む読者にはわかりづらいかもしれないが、鉄道、とくに国鉄を継承したJRの路線は、長距離移動を前提に設計されている。
かつて、クルマが高級品だった時代、長距離移動の主役は鉄道だった。当時は高速道路もほとんどなかった。バスといえば、町中を走る路線バスしかない。ほとんどの人が路線バスや自転車、徒歩で駅まで行き、そこから鉄道に乗って、ほかの町へと移動していた。
鉄道本来の特性は、駅でまとまった数の乗客を乗せ、大量輸送することだ。
地方路線の駅間距離が長いのは、ある程度まとまった乗客数を維持するための効率性、長い駅間距離による高速運行を念頭に置いたものだった。
しかし、いまや鉄道、とくにJRの地方ローカル線は、地方人口の減少、クルマの普及、高速バスとの競合という3つの理由から乗客が激減し、存在意義が問われているわけだ。
その現状は、輸送密度や営業係数といった数字が、残酷なまでに描きだしている。
ただ、こうした変化は、社会全体がより便利な方向へシフトした結果でもある。そんな中、鉄道を無理に維持すること自体、本末転倒なのかもしれない。