「集団的自衛権」という論理の原初的な姿
いわば、13の北米の独立主権国家は集団的に自衛権を行使していた。独立を宣言した後も戦争を仕掛けてくるイギリス王の軍隊を、13の独立主権国家は、共同行動を通じて排除した。
当時の国際社会に、集団的自衛権という概念はなかった。しかし「バランス・オブ・パワー」の維持を目的にして大国間が均衡を見出すための戦争を繰り返していた「ヨーロッパ国際社会」とは異なり、北米大陸の13の独立主権国家は、相互に平等であると考えられ、そして領土的野心や、大国間の力の均衡を目的にするのではなく、ただ主権国家の独立を目指した安全保障政策のために独立戦争を戦った。
この点に着目するならば、アメリカ独立戦争において、集団的自衛権の論理の原初的な姿が萌芽的に立ち現れてきていたことに気づく。
この歴史的観察は、アメリカ合衆国こそが、20世紀になってから集団的自衛権を一つの法規範とする新しい国際秩序の形成を主導した国である事実と、深く結びついている。