「アメリカ様」の子分気質が抜けていない

いろいろなご意見があるだろうが、筆者は日本人が抱くアメリカへの劣等感の弊害ではないかと思っている。

日本はアメリカにケンカを売って返り討ちに遭って、原爆まで落とされたトラウマから、「アメリカ様」が世界の中心であって、「アメリカ様」のまねさえしていれば安泰という「子分気質」が自分たちで気づかないほど強くなってしまっている。

それを象徴するのが、「保守」だ。一般の国では「保守」は自国の主権や独立性を重んじる。なので、世界の警察を気取ってよその国に土足で入ってきて、主権を侵害するアメリカを敵視することが多い。しかし、日本の「保守」は過剰に親米で、アメリカ様には喜んで主権侵害されましょうという卑屈な考えで、アメリカを敵視する同胞を「反日」と攻撃するほど、世界観がおかしなことになっている。

このように骨の髄まで対米従属なので、経済観もアメリカ偏重だ。それを象徴するのが先ほどのOECDの雇用保護指標だ。ここで「日本よりも解雇しやすい国」を見てみると、やはりアメリカがトップで、カナダ、英国といういわゆるアングロ・サクソン諸国が続く。

これらの国が日本よりも労働生産性が高く、経済も堅調に成長をしているのはご存じの通りだ。「使えない人間をクビにしやすくしろ」と主張する人たちは、このようなデータを根拠にしている。

アメリカの高い生産性を支える移民たち

ただ、そう見えるのは「アメリカ様へのコンプレックス」によって目が曇っているからだ。「日本よりも解雇しにくい国」をみると、ドイツ、スウェーデン、フランスなどがある。これらの3国はカナダや英国よりも生産性が高い。

つまり、社員をクビにしやすくするという話と、その国の生産性はそれほど関係ないのだ。

じゃあ、アメリカの生産性が高いのはなぜかというと、「社員をクビにしやすい」ということなど以上に、大きな要因がある。

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それは「移民」だ。アメリカは先進国であるにもかかわらず毎日、移民が大量に流れ込んでくるので長期的に見ると、人口が右肩あがりで増えている稀有な国だ。GDPというのは単純に言えば「人口×生産性」なので当然、経済も成長していく。

しかも、「移民」の中には英語も喋れないような不法移民だけではなく、各国の優秀な人材・唯一無二の才能を持つような人々が、自国よりも実力を評価してくれる、競争しやすい環境を求めてくる場合もある。そういうハイレベルな移民がGAFAのような成長分野にわんさかとやってきて、今回のようにわんさかとクビを切られて、労働市場を動きまわる。これが本当のアメリカ経済のダイナミズムだ。