「使えない社員をクビにできる国は強い」という神話
だが、日本人の多くはこういうところを絶対に評価しない。「移民」と聞くと、「治安悪化や犯罪の温床だ」「アメリカ社会の闇だ」なんて言って目を背ける。それは国それぞれの考え方なので悪いことではないが、問題はその経済的恩恵まで無視してしまうことだ。
移民の経済的恩恵をスルーしたままアメリカ経済の強さを説明しようとするので、自分たちの尺度で強引にこじつけるしかない。ここまで言えばお分かりだろう、これが「使えない社員をさっさとクビにできるからアメリカは強い」という「神話」を生んだのだ。
そこに加えて、この「神話」がそれなりに支持されるのは、日本人の伝統的な集団心理も影響しているのではないか、と個人的には思っている。
日本は「負け戦」感が漂ってくると、不安になった人々が「社会の役に立たない者」に責任をなすりつける傾向がある。太平洋戦争でも戦局が悪化してくると、兵隊になれない男性、子どもを産まない女性、そして障害者や病人は「あいつらのような役立たずがいるから日本は苦しい」と相次いでバッシングされた。
歴史は繰り返すではないが、今の日本も「経済戦争」で惨敗のムードが漂っているので、「役に立っていない人」を叩くことで不安から逃れたいという人が増えている。
今はまだ「大企業の使えない社員」だが、そのうち「働かない人」「専業主婦」「高齢者」「障害者」「子どもを産まない女性」などがターゲットにされていくかもしれない。
貧すれば鈍するではないが、嫌な世の中になったものだ。