イーロン・マスク氏の衛星通信サービスが日本で始まる

テック界の革命児、イーロン・マスク氏。買収によりTwitterを手中に収めた氏の勢いが止まらない。

米実業家イーロン・マスク氏
写真=AFP/時事通信フォト
米実業家イーロン・マスク氏(2022年5月2日、アメリカ・ニューヨーク)

だが、自動運転EV開発のテスラ、宇宙開発のスペースX、そして新たにTwitterを掌握した革命児の言動に、危うさが見え隠れする。中露寄りの発言を繰り返していることに加え、一度はロシアからの防衛戦でウクライナに寄与したスターリンク衛星通信サービスが、破竹の勢いで巻き返しを進めるウクライナ軍に「壊滅的な混乱」をもたらしているとの海外報道が聞かれるようになった。

家庭で衛星インターネットを利用できるスターリンクは10月以降、日本でも順次展開している。個人や企業が手軽に衛星経由での通信を楽しめるサービスだ。

このサービスは、イーロン・マスクCEO率いる米スペースX社が提供している。高度550km前後の低軌道に多数の中継衛星を浮かべ、空からデータ通信を中継するしくみだ。空の見渡せる場所に受信用のディッシュ(アンテナ)さえ設置すれば、既存のネット回線に依存せずにインターネットを利用可能となる。

僻地では光ファイバーを延々と敷設せずとも、目的の建物単体でネット環境を導入できる利便性がある。加えて都市部でも、万一の際のバックアップとして注目が集まるだろう。仮に大規模な震災などで通信網が寸断されても、スターリンクの受信用ディッシュと家庭用発電機があればネットを利用できる。家庭はもちろんのこと、役場や消防などで導入が進んでいれば、復旧への情報収集がスムーズに進みそうだ。

価格は初期費用として、アンテナなどを含むキットが7万3000円となっている。月額利用料金は1万2300円の設定だ。現時点で沖縄を除く日本のほぼ全土で利用可能となっている。

スターリンクの登場により、衛星通信を個人で利用できる時代が訪れた。ところがこの技術は個人の生活環境だけでなく、一国の在り方すら変えようとしている。

「スターリンク」WEBサイト
写真=「スターリンク」WEBサイトより

ウクライナの救世主になった

ロシアによる2月からの侵攻を受け、ウクライナ国内の被災地域では通信が寸断された。この状況を救ったのがスターリンクだ。ウクライナ政府の技術部門を統括するフェドロフ副首相がTwitterで支援を要請すると、スペースXのイーロン・マスク氏はわずか11時間弱で同国でのサービスを始動させた。