だが、マスクCEOが意図的に、両軍が激しく衝突する地域でサービスを遮断したとの見解も聞かれるようになった。上記の通信障害が発生した地域とは別になるが、少なくともクリミア半島においては、明確な意志をもってサービスを遮断したようだ。

米インサイダーは、米有力政治アナリストのイアン・ブレマー氏の見解として、プーチンが核のボタンに手を伸ばす事態を懸念したマスク氏が、クリミアでのサービス提供を断ったと報じている。

クリミア奪還を進めたいウクライナ側から同地でのサービス開始を要請されたが、米有力政治アナリストのイアン・ブレマー氏によると、マスク氏は「(事態が)エスカレーションする可能性があるため断った」という。

「ウクライナのネットを任せておくべきではない」

ウクライナ全土へのスターリンク提供についても、マスク氏はサービスの無償提供を続ける意向をツイッターで表明しているが、一時態度を硬化させた事実は見逃せない。

マスク氏は10月14日、米国政府が費用を負担しない場合、サービスを無償で無期限に提供することはできないとツイッターで警告した。ビジネスとしては当然の判断だが、重度に依存するウクライナにとっては死活問題だ。

米『ポリティコ』誌EU版によるとEUは、EU諸国が費用を負担することでウクライナへのサービス継続を要請できないか検討していると報じた。

リトアニアのガブリエリウス・ランズベルギス外相は同誌に対し、「ある朝目覚めて『もうやりたくないからやめだ』と言い、翌日には『ウクライナ人たちはネットなしでもやっていけるだろう』と言うような一人の『超強大な』人間に、ウクライナのネットアクセスを任せておくべきではない」と警告した。

ロシア・中国寄りの発言を繰り返してきた

こうした意見が聞かれるようになった背景には、各国の政治情勢に絡めて危うい発言を繰り返してきたマスク氏の過去がある。氏は今年に入ってから、ロシア寄り・中国寄りと取れる発言を繰り返している。

1億人以上のフォロワーを持つマスク氏はTwitter上にて、「1783年以来、(フルシチョフの過ちまで)そうであったように、クリミアを公式にロシアの一部とする」ことを含む独自の和平案を提案し、投票機能を通じて賛否を問うた。ウクライナ側は激しく反発している。

中台関係をめぐっては、台湾側が支配権の一部を中国に譲ることで和平がもたらされるとの考えを披露した。マスク氏はフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、「私の提案としては……台湾の特別行政区という形で解決策を見出してはどうか。皆が納得するわけではないが、おおむね良い形だ」と語っている。