40代で味わった2度のどん底

程なく、リーマンショックが会社を直撃した。

「例えば海外セレブの方は景気の変動に関係なく買うわけですが、それだけで全社員の給料が賄えるわけがなく、店頭で日々売っている商品が会社を支えていますから、リーマンショックも今回のコロナも、経営をまさに直撃するんです」

こういう時に限って上層部は、職場の改革など無理難題を押し付けてくる。窪田さんは、「予算は割けないからお金をかけずに改革をやれと。もう、地獄でした」と振り返る。

窪田さんにとっての「地獄」は、リーマンショックだけではなかった。42、3歳ごろから顕著になった更年期障害という、これまで経験したことのない体調不良に襲われた。

「若い時は汗なんてほとんどかかなかったのに、どこから出るのと思うほど汗が出て、動悸どうきもするし、簡単に熱中症になって倒れてしまうし。とりわけ、気分障害が激しくて……」

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気づいたら周りの人間がどんどん離れてしまっていた

ちょうど重い責任が課せられ、出世の階段を登る時期。窪田さんは、更年期の複雑な症状に翻弄される。

「気分障害」と窪田さんは表現したが、とりわけ以前と決定的に変わったのは、「被害者意識」が生まれたことだったと言う。

「一番、それが大きかったと思います。周りが悪いとか、自分はいじめられているとか、理不尽にひどい目に遭っているとか、被害者意識を持ってしまうんです。当時はそれが年齢的な病気のせいだとは思っていないわけで、ハッと気づいた時には、もう遅い。周りの人間がどんどん離れて行ってしまいました」

その被害者意識には、明確な理由もあった。差別されてきたこと、不当な扱いを受けたことによる心の傷は、窪田さんの胸に深く刻み込まれていた。

「そういうものが積もり積もってのことだとは思いますが、やっぱり女性は被害者意識を持ちやすい。当時、部下への当たりがキツかったし、怒りの制御ができなかったですね。これは私だけではなく、40代、50代の女性社員って妙にイライラして人に当たって、厳しいことを言って、嫌われている人がかなりいることが見えてきたんです」 

個人として指摘すれば、パワハラになりかねない。更年期障害について会社が働きかけをしてくれないと女性の出世はあり得ないと、窪田さんは痛切に思う。