この12年間、政府の原発政策に振り回されっぱなし

時はさかのぼって2010年。当時のメルケル政権は電力会社とのディールで、17基あった原発の稼働年数を平均12年延ばす代わりに、核燃料棒を取り替えるたびに電力会社が高額な燃料税を払うことを決めた。

ところが翌11年、福島の事故を機にメルケル氏が突然豹変ひょうへん。8基の原発は即時停止となり、残りの9基も22年には全基止まることが決まった(これに関しては、違法であるとしてのちに電力会社が訴え、負けが濃厚だった政府側が示談に持ち込み、電力会社は賠償金を受け取っている)。

ところが今、その脱原発のゴールの一歩手前で、またもや政党の党利党略で、突然、原発3基の運命が変えられようとしている。しかも、今回も電力会社の頭越し。彼らは国営企業でもなければ福祉事業者でもないのだから、「これ以上振り回されて何の得があるのか」と思うのは、当然かもしれない。

ただ、現在、電力会社側が主張しているのはそんな感情論ではなく、次のようなことだ。

実際に稼働できる期間は60日もない

まず、今まで、風力電気が十分にあるからという理由で、停止が確実とされていたニーダーザクセン州のエムスラント原発。同州の環境相が、突然、稼働を4カ月半も延長するには、ハードルが高いと言い出した。

そうでなくても、現在使用中の核燃料の寿命は終焉しゅうえんに向かっており、11月からは80%の出力で運転する予定だった。つまり、延長のためには、まだ使える核燃料棒を選んで組み直す必要があり、原発は一時停止しなければならない。また、その後の再稼働には、当然、安全確認が必要となり、その上、出力はさらに落ちる。結局、それらを全部クリアしたとしても、正味の延長稼働時間はわずか45日から60日ほどになるだろうとのこと。要するに、州は稼働延長はしたくないらしい。

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過激な反原発グループも黙っておらず…

また、同原発の所有者であるRWE社も、すでに6月の時点で、「今頃、そんな話を始めてももう遅い」とつれなかった。ドイツにはいまだに強硬な反原発の運動グループが存在し、彼らが過激な抗議運動に出始めることも目に見えている。これまで反対派に散々苦労してきたのがRWEだったから、今さら数カ月の延長のせいでそんな騒動に巻き込まれるのはまっぴら御免というのが、正直なところかもしれない。

では、バーデン=ヴュルテンベルク州のネッカーヴェストハイム2号はというと、所有者であるEnBW社は、つい先日までは「可能」と言っていたが、今月18日にそれが突然「困難」に変わった。何年もかかって停止に向けて準備してきたので、稼働延長のための人員の確保や、安全の確認はそんなに急にはできないし、もし、延長するなら、やはり、一度止めてすべて調整しなければならない。「それでもいいの?」という感じだ。