「国民保護」のための法制度
戦後日本の安全保障政策のフレームを転換したものの一つに、1992年のPKO協力法があるが、これにより自衛隊は国連による国連平和維持活動(Peace Keeping Operation)のために海外派遣されることが可能となった。
その半面、自衛隊が国外に派遣されることに対して「海外での戦争に参加する道を開くもの」とする批判が、野党や一部のメディア、市民の間からも多く発生した。また1999年の通信傍受法では、組織的犯罪に対する電話やネットなどへの通信傍受が可能となった。
しかし、これに対しても野党や一部メディアからは「盗聴法」という名前で大きな批判を浴びた。
2001年のアメリカ同時多発テロ事件を受け、世界的なテロ対策の構築と協調が求められるという国際環境の中で、小泉純一郎政権は2003年に国民保護法を成立させた。これは、テロリズム事案、ミサイル事案、武力攻撃事態の3つに対して国民の生命と生活を守るための「国民保護」のための法制度である。
この国民保護法に基づいて、政府は都道府県自治体、市町村自治体に対してそれぞれの国民保護計画を構築することを義務付けた。また電気、ガス、水道、通信といった社会インフラや、空港、鉄道、バスなどの交通インフラ、またはテレビ局や新聞社などメディアに対して協力機関として指定し、その国民保護に協力する計画の構築を求めた。
その後、毎年全国のいずれかの自治体と連携して、内閣官房は実際のテロ事件のシナリオをもとに国民保護訓練を実施している。
また、北朝鮮をはじめとする周辺国からの弾道ミサイル攻撃に対処するためのミサイル防衛システムを構築し、全国瞬時警報システム(Jアラート)を整備した。
2017年の北朝鮮ミサイル危機においては、安倍政権は全国の自治体に、弾道ミサイルからの避難訓練実施を自治体に求め、それまで日本で戦後一度も実施されていなかったミサイル避難訓練が実施された。
テロや戦争に関する機密情報が各国と共有可能に
こうした国際環境と国内政治背景のもとに、安倍政権は数多くの安全保障、テロ対策に関する政策を実現させた。
たとえば安倍政権が2013年に成立させた特定秘密保護法は、政府が国家機密となる「特定秘密」を指定し、それが漏洩するのを防ぐための法律である。テロ対策や安全保障政策のためには、同盟国をはじめとして協調する各国との間で、テロや戦争に関する重要情報を共有することが必要となる。