安倍晋三元首相は、首相在任中に特定秘密保護法やテロ等準備罪の新設など、世論を二分する政策を次々と推し進めた。日本大学危機管理学部の福田充教授は「安全保障・危機管理の政策は戦後のタブーとなっていた。安倍氏は大国の一方的な暴力から日本の平和を守ろうとした。その功績は非常に大きい」という――。

※本稿は、福田充『政治と暴力 安倍晋三銃撃事件とテロリズム』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

首相官邸を去る際に、手を振る安倍晋三首相=2020年9月16日、東京・永田町
写真=時事通信フォト
首相官邸を去る際に、手を振る安倍晋三首相=2020年9月16日、東京・永田町

首相としての最大の功績

安倍元首相が政権を担当した2006年からの長い年月の中で、長期化したデフレと不況を乗り越えるためのアベノミクスに代表される経済政策をはじめとして、戦後の自民党の念願である憲法改正、自ら強みとして打ち出した外交政策など、安倍政権の政策の成否はそれぞれに総括が必要であり、これから各領域において検証されることになるだろう。

その中でも、安倍元首相の政治家として、首相としての最大の功績は、日本の安全保障、外交をグローバルな文脈で再構築し世界と接続したことである。

第二次安倍政権においては、安全保障やテロ対策の国際環境に日本を適合させるための数々の政策が構築された。それらが特定秘密保護法であり、国家安全保障会議(NSC)であり、安全保障法制、テロ等準備罪といった一連の政策である。

これらは戦後民主主義におけるドメスティックな視点で見れば、「日本の右傾化」と揶揄され、「日本を戦争ができる国にする政策」と批判されたが、国際的な観点で見れば、これらの政策は安全保障やテロ対策について欧米を中心とする国際的な安全保障、テロ対策の環境に合わせて協調するための国際協調主義に基づくものであった。

安倍政権が実行してきた安全保障政策は、現代の国際環境における平和構築のための積極的平和主義に根差したものとして評価されるべきである。