しかしながら、国内法で国家機密を保護する法律が存在しない国家には、各国政府、インテリジェンス機関は情報が漏洩することを恐れて、情報共有することができないのである。

国家機密を保護する法律を持たない日本は、そういう状態で国際社会から孤立していた。この特定秘密保護法ができたことによって、日本は世界各国政府やインテリジェンス機関とのルールを共有することが可能になり、その結果、テロリズムや戦争に関する機密情報が各国と共有可能な状態になったのである。

メディアによる共謀罪反対のキャンペーン

また日本版NSCと呼ばれる国家安全保障会議も、その設置法により実現した。これは日本を脅かす戦争、テロリズムなどの国家的危機に対処するために世界の情報を収集し、その情報を分析し、政府内で共有することで一元的な政策立案に役立てるための組織である。

これまで内閣情報調査室や、警察庁の公安、外務省などに分散して存在していた情報機関の情報をより大きくカバーして統合することによって、国家のリーダーである首相のもと、内閣での安全保障の情報分析と政策立案機能を強化するための組織改革であった。

さらに、安倍政権が2017年に成立させたテロ等準備罪もテロ組織や反社会的勢力などによる組織犯罪を未然に防止するための国際条約であるTOC条約を批准するために、日本の法体系を合わせることを目的としていた。

テロリズム等の犯罪を実行する事前の段階で、そのテロを実行するために準備をした行為に対して罰則を設けることがこの法律の特色である。

この法案に対して今まで日本で認められなかった「共謀罪」を導入するものだとして日本国内では大きな反対が発生した。野党や一部メディア、市民による共謀罪反対のメディアキャンペーンにより、審議中の国会周辺では市民による大規模なデモが発生した。

市内のデモで拳を上げた人々。ストライキで一緒に人々の多民族グループ。
写真=iStock.com/FilippoBacci
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シビアな国際環境を冷静に見ていた

筆者は、このテロ等準備罪の審議の過程で参議院法務委員会の参考人陳述でこのテロ等準備罪を支持する意見陳述を行った。

アメリカやイギリスといったテロ対策先進国のテロリズム関連法と比較しても、十分に市民の人権に配慮した内容になっているという点を指摘し、テロ対策の国際協調路線の構築、各国との連携のためにこの法律は必要であり、我が国の積極的平和主義に資するものだというのが論旨であった。