「子どもにテレビを見せると学力が下がる」は誤り

教室で生徒たちに聞いても、面白いことに国語力が高い子の共通点は、「これまで一度も、親からテレビの視聴制限を受けたことがない」という点なのです。

つまり、国語が得意な子どもたちは、「好きなときに好きなだけ、自由にテレビを見ることが許されている環境にある」ということです。

これはこの11年間、教室生のほぼ全員に聴き取りをした結果ですから、テレビが語彙力と理解力の増進に一役買っていることは、間違いないと思います。

米スタンフォード大学のマシュー・ゲンコウ教授らが行った、「子どもにテレビを見せると子どもの学力は下がるのか」という調査でも、幼少期にテレビを見ることができた家庭(一日平均3時間半と結構長めの視聴時間)と、見ることができなかった家庭の子どもの小学校入学後の偏差値は、テレビを視聴していた子どものほうが0.02高かったそうです。

これには理数系教科の偏差値も入っているため、わずかな差になっていますが、文系教科だけで比べれば、もう少しはっきりと差が出たかもしれません。

だからこそ、お子さんに「どんな書物でも読みこなす力」「学校や塾の授業を正しく深く理解する力」を身につけさせたいと思うなら、まずは世界中のありとあらゆるものを、テレビを使ってでも先に見聞きさせておくといいのです。もちろん、実際に五感で体験させるのが理想ですが、それには時間もお金もかかりすぎます。

あらゆる番組を自由に見せよう

こうお話しすると、「お笑いやバラエティー番組は、くだらないから見せなくていいですよね」「ニュースだけ見せておけばいいでしょうか」と視聴番組を制限しようとされる方が多いのですが、情報の少ない昔ならともかく、この情報のあふれかえる現代社会で、あまりに親が情報を制限してしまうと、お子さんのメディアリテラシーが育ちません。

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一流のお笑い芸人さんたちの話術の巧みさやユーモアのセンスは、見ていて学ぶところがたくさんありますし、そもそも、お子さんにとってなにが役に立ち、なにがくだらないかは、その子の人生の目的によって全然違ってきます。

オリンピックを見てスポーツ選手をめざす子が出てくるように、「笑点」を見て落語家をめざす子が出てきたり、アニメを見てアニメーターをめざす子が出てくる、はたまた園芸番組を見て庭師になろうとする子もいたりするわけです。子どもの才能は千差万別ですから、なにを見てどう触発されるかは、親にも誰にもわかりません。

子どもは、あらゆる情報を与えられて初めて、それが好きか嫌いかを自分で判断し、取捨選択するようになります。そうやって少しずつ、その情報が真実なのか偽りなのか、低俗なものなのか高尚なものなのかを見極める力を身につけていくのです。