「文字を読めること=内容を理解できる」ではない

私の教室には、小1〜小3が通う「プライマリー」というクラスがあります。

ひらがな・カタカナが読み書きできることが入室条件なので、当然プライマリーの生徒たちはみんな、絵本の文字を自分で読むことができます。

そのクラスで、浜田広介童話の傑作『泣いた赤おに』を読み聞かせていたときのことです。

話の途中で、一人の生徒(小2男子)が、「なぜ青おにが悪者のふりをしたのか、その理由がわからない」と言い始めました。

今の子どもたちは、集団で外遊びをする機会が少ないですし、集まっても黙ってゲームをするくらいで、人間関係が希薄な傾向にあります。友人のためにわざわざ殴られ役を買って出る、そんな友情が理解できないようでした。

そこで、青おにの気持ちを説明してやり、一気に最後まで読み進むと、今度は、「なぜ青おには旅に出たのか?」と聞くのです。

『泣いた赤おに』を読んだことがない方のためにご説明しますと、このお話は、人間と仲良くなりたい赤おにと、心優しい青おにの感動友情ストーリー。赤おにが人間からよく思われるよう、友人の青おにがわざと村で大暴れし、そこに赤おにがさっそうと現れて村人を救うんです。

おかげで、赤おには村の人たちと仲良くなるのですが、友人の青おにがさっぱり会いに来ない。そこで赤おには、山奥の青おにの家まで訪ねていきますが、戸口には「旅に出る」という青おにの手紙が貼りつけられていたのです(これから読む方のために、詳細は書かずにおきますね)。

青おにの手紙は、涙無くしては読めない手紙です。

それなのに、涙をこらえて必死に読んだ私を、子どもたちは目をぱちくりさせて不思議そうに見つめているではありませんか。

私は、「ええっ、なんでわからないの〜」という気持ちをぐっとこらえ、青おにの心情を子どもたちの人間関係に置き換えてじっくりと解説してあげました。

読み聞かせの後に対話することが大切

そして、もう一度初めから読み直したのです。

すると、どうでしょう。先ほどの小2の男子は目に涙をため、「先生、これ、すごくいいお話だね」と言ってくれたのです。

物語が子どもの心に届くとは、こういうことなんだなあ。

私はこの日、子どもたちから、読み聞かせの極意を教えてもらった気がしました。以来、私は子どもたちに本を読み聞かせるとき、必ず対話をしながら、お話から置いてきぼりになっている子がいないかを確かめながら、読み進めるようにしています。

集中して聞いている子もいるので、解説が必要ない子には最後まで一気に読んであげ、読み終えた後でじっくり対話の時間をとるといいでしょう。

父親が家族に絵本の読み聞かせ
写真=iStock.com/monzenmachi
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