早すぎる「一人読み」移行は悪い読みグセをつける

いずれにせよ、読み聞かせは、読みっぱなしではいけないということです。

「主人公はどうしてあんな行動をとったのかな?」
「あなたなら、あの場面でどうしたと思う?」

さまざまな質問を投げかけて、一冊一冊をより深い理解へ導いてあげること。それが、9歳以降の読解力をぐーんと伸ばす秘訣ひけつです。

この事例のように、わからないことを「わからない」と質問できる子はまれで、大半のお子さんは、恥ずかしさ、あるいは興味のなさから質問をせず、語彙や状況がわからないまま、理解したふりをして話を聞いています。

わかっている子ほど質問が多く、わからない子は受け身でただ静かに聞いているというのは、どの教科でも同じですね。文字は読めるけれど文章の意味がよくわからない、という状態で「一人読み」をさせると、当然ですが本を読むのがだんだん面白くなくなります。

とはいえ、意味が「わかっている」状態を経験したことがないのですから、この段階ではまだ、自分が本を読めていないことにさえ気づいていません。

本を読むポーズをとっていれば親は喜ぶし、本を読んでいる「賢いキャラ」の自分も嫌いじゃない。そこで、なんとな〜く読めるふりを続けているうちに、いつの間にか「飛ばし読み」「主観読み」「文字通り読み」という困った読みグセが身についてしまうのです。

ですから、いつ手を離すか? 「読み聞かせ」から「一人読み」への移行期を、しっかり見極めることが大切です。

ちゃんと読めているか確かめる方法

そろそろ移行してもいいかなと思い始めたら、ちゃんと読めているかどうかテストしてみましょう。やり方は、こうです。

絵本の一番面白いところまで読んであげて、先が気になってたまらないというところで本を置き、「ちょっと用事があるから、ここから先は自分で読んでおいてね」といって部屋を出ます。このとき、「どんなお話だったか、後で教えて」と声をかけておきましょう。

そうして、後で、どんなストーリーだったかを話してもらうのです。

きちんと話の続きが説明でき、主人公の心情などいくつかの質問にしっかり答えられたら、もう「一人で読めている」ということです。

その後、一人読みのパートを少しずつ長くしていき、絵本1冊分のお話が上手に説明できるようであれば、一人読みに移行させてもなんの問題もありません。

しどろもどろになってお話の説明ができない。
登場人物の心情がわかっていない。

というような場合は、まだ一人読みさせるには早すぎるということです。たっぷりの読み聞かせと対話を、しばし続けてあげましょう。

久松由理『国語の成績は観察力で必ず伸びる』(かんき出版)
久松由理『国語の成績は観察力で必ず伸びる』(かんき出版)

「読み聞かせ」について、あと一つだけ注意していただきたいことがあります。ドラマの中で、子どもを寝かしつけるために絵本を読み、数ページ読んだら子どもが眠ってしまうシーン、よくありますよね(笑)。

あれはあくまでもドラマのワンシーンですから、くれぐれも実生活では、あのような読み聞かせをなさいませんように。

以前、読み聞かせの途中で毎晩眠ってしまい、昔話の結末を聞いたことがないという子がいましたが、その子がどれだけ国語で苦労したかはいうまでもありません。

正直爺さんが幸せになり、嘘つき爺さんが痛い目にあう、という結末があるからこそ、子どもたちの道徳観や論理力が育つのです。

物語は最後まで、しっかり読んで聞かせましょう。

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