大切なのは親の「言葉」ではなく「行動」
親からなんでもかんでも押しつけられて育つと、子どもは「自分で考える」機会がなくなってしまうことになります。すると、「みんながそうしているから」とか、「はやっているから」とか、なんでも「自分の外」に理由づけして行動してしまうわけです。これでは、何も自分で決められない人になってしまいます。
よく「主体性や積極性を育みましょう」と言われたりしますが、真逆のことをやってしまっているんですね。私の塾に来ている子どもたちは、学校以外の時間でもかなりハードな勉強に取り組んでいるため、どうしても親子の会話の時間が短くなってしまいます。
たとえば、中学受験に挑戦中の子なら、朝30分、夜30分くらいになってしまうものです。そこで大事になるのが、親の「言葉」だけでなく、「行動」です。親の行動によって、子どもが強く励まされたりひどく落ち込んだり、あるいは大きく成長したり成長を邪魔されたりするからです。
行動を通じて、親子のあいだには、常に「心のおしゃべり」が交わされています。無言のコミュニケーションと言ってもいいでしょう。「親の行動」は、すべてがメッセージとなって、子どもに深く影響を与えているのです。たとえば、私は塾に通ってくる子の「お弁当」をよく見るようにしています。親の行動がそのまま現れているからです。
「茶色いお肉弁当」が発しているメッセージ
家庭によって、お弁当は本当にいろいろです。彩り豊かで栄養バランスのとれたお弁当を見ることもあれば、おかずがお肉ばかりで、子どもが食べないという理由で、野菜が一切入っていないものに出合うこともあります。そういう「茶色いお肉弁当」がずっと続く子もいます。
ところで、小学校6年生と中学校3年生の最後になると、「算数」と「数学」にはそれぞれ図形問題が出てきて、一気に難しくなります。このとき、「茶色いお肉弁当」を食べ続けた子は、こうした難しい問題を避けがちです。とっつきやすい教科に逃げてしまうことがあるんですね。
どういうことかというと、自分の嫌いなおかずがなく、好きなものだけのお弁当を食べている子は、勉強の場面で、親の考えをマネすることがあります。つまり「嫌いなものは避けてもいいんだ」ということを学んでしまうのです。
毎日のお弁当という「心のおしゃべり」によって、「親の価値観」はしっかりと子どもに伝わっているのです。「イヤなことから安易に逃げない心」を育むためには、私たちおとなの「行動」や日頃の習慣も、きちんと整えていく必要があります。