アメリカのNGOである武器管理協会のガブリエラ・イベリズ・ローザヘルナンデス研究員も、ウクライナへの援助について特別査察官事務所が設置されれば、アメリカの資金がどこ(とりわけ安全保障の領域で)に行き着いたかを追跡する助けになるだろうと語る。
ただ、援助の規模が大きいことや、軽兵器は追跡が難しいことを考えると、実際の作業は厄介なものになるだろうとローザヘルナンデスは予想する。アフガニスタンでも、タリバンがアメリカの兵器を一部入手したし、イラクやシリアでは、現地のパートナーに提供するはずの武器が過激派組織「イスラム国」(IS)のようなテロ組織の手に渡ったことがあった。
「戦争中に武器援助の流れを追跡するのは非常に難しい。小火器の場合はなおさらだ」と、ローザヘルナンデスは言う。「戦場では、軍需品の管理は貧弱になりがちだ。アメリカとウクライナ双方の政策立案者が、説明責任に重点を置く必要がある」
世界でも指折りの「腐敗大国」
米議会では実際、対ウクライナ援助の流れをもっと厳しく監視するべきだという声が、民主・共和どちらの党の議員からも上がっている。ランド・ポール上院議員(共和党)は5月、上院が400億ドルのウクライナ追加支援法案を迅速に可決しようとしたとき、その手続きに反対して採決を遅らせた(ファスト・トラック手続きを利用するためには満場一致の賛成が必要になるためだ)。
チャック・グラスリー上院議員(共和党)も6月、援助の監視体制が脆弱だと声を上げた。保守派だけではない。上院軍事委員会のメンバーである民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員も、強力な監視の仕組みを確立するよう求めた。
1991年にソ連から独立したウクライナは、大掛かりな腐敗に長年苦しんできた。国際NGOトランスペアレンシー・インターナショナル(TI)の21年の汚職腐敗度指数(CPI)で、ウクライナはエスワティニ(旧スワジランド)と並び世界122位にランクされている。すぐ下にはガボンやメキシコ、ニジェール、パプアニューギニアといった国がランクされている。
ちなみにアフガニスタンは174位と、もっと下だ。イラクは157位、シリアは178位、アメリカは27位、ロシアは136位だ。ただし、「このランキングは、あくまで腐敗の認識を測定したものであって、実際の腐敗レベルとは違う」と、TIウクライナ支部のオレクサンドル・カリテンコ法務顧問は語る。
「このランキングは、あくまで腐敗の認識を測定したものであって、実際の腐敗レベルとは違う」と、TIウクライナ支部のオレクサンドル・カリテンコ法務顧問は語る。