「反ワクチン陰謀論」実は200年前からある
アメリカでは議会議事堂乱入事件の衝撃を受けて、Qアノンの投稿をSNSから排除し始めました。こうして【Q】も、鳴りを潜めました。
そうしたなかで今後もっとも心配なのは、Qアノンと新型コロナウイルス感染症のパンデミックでやや劣勢となっている反ワクチン運動とが合体していくことです。
Qアノンの「政府が“闇の政府(ディープ・ステート)”に乗っ取られている」という主張と、反ワクチン派の「医師と製薬会社は結託して健康な人々に不必要なだけではなく、害をもたらすワクチンを打とうとしている」という主張が一緒になっている面があるのです。
もともとアメリカやイギリスには1850年代に始まった反ワクチン運動の長い歴史があります。その反ワクチン運動にはQアノンと共通する部分が多いとナカイサヤカ氏は指摘します(『増補版 陰謀論はどこまで真実か』文芸社)。
以下に、その要約を記しておきます。
「たとえば、対象に合わせて恐怖と不安を煽る陰謀論を利用する点だ。『政府に強制されてワクチンを打っても大丈夫か。子どもが副作用を起こさないか心配』と考える母親たちにアピールするために、1860年代の種痘、いわゆる天然痘の予防接種の反対活動家たちは母親たちを怯えさせようとして、官僚や医者が悪魔や魔女と結託していると触れまわった」
「反ワクチン活動家は、人々に科学と政府に対する不信感を植えつけ、誘導するために誤った情報の発信を続けるだろう。Qアノン信奉者と同じように、反ワクチン活動家も自分たちなりの正義の戦いを続けているのだ」
「新型コロナウイルスの流行で、ワクチンの有効性を改めて体感する人が増えている。
そうしたなかで、勢力を失いつつある反ワクチン活動家と、行き場を失ったQアノン信奉者が合体するのを阻止するのは難しいかもしれない。またQアノン信奉者と反ワクチン運動が融合することで、すでにアメリカという一国を超えて世界に広がっているQアノンが、もっと多くの信奉者を集める道を開くことになるかもしれない」
斉藤県議の場合を見ればわかるように、実際にQアノンの主張と反ワクチン運動は結びついているのです。