新国王の描く王室の姿

国内で人気が浮上しているとはいえ、エリザベス女王という強い柱を失った今、チャールズ新国王の前途はバラ色ではない。現在、イギリスでは未曽有の高インフレが国民の生活が圧迫している。今年7月には、前年同月に比べて10.01%も物価が上がっており、40年ぶりの高水準を記録。8月は、それより鈍化したが9.9%の伸び率だ。

「国民が苦しい時には、国民とともにある王室の姿を伝えたい。王室も、世の中の変化に合わせた新しい形にしたい」――。そう考えるチャールズ国王は、すでに王室の経費を削る意向を明らかにしている。

手始めは、自身の即位式だ。即位式は来年に行われる予定だが、1953年に行われた母親のエリザベス女王の時よりも簡素化したいと、周辺に伝えているという。

さらに、イギリスの大衆紙デイリーミラーによると、新国王は、王室の所有する土地や城の使途を見直し、もっと国民に開かれた王室にしたいと考えているという。チャールズ国王はロンドンにあるバッキンガム宮殿を拠点に執務をする予定だが、宮殿や庭園を、国王滞在中も含めて年間を通じて一般に開放したいとの意向を示している。また、女王が亡くなった時に滞在していたバルモラル宮殿を博物館にするアイデアも浮上している。

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イギリス・ロンドンにあるバッキンガム宮殿

イギリスの影響力を支える「英連邦」

イギリス王室にとって、国内の支持だけでなく、国外で信頼を得ることも最重要課題の一つである。その一つが「英連邦(Commonwealth of Nations)」の国々からの信頼だ。この点は、日本の皇室と大きく異なるところかもしれない。

英連邦は、イギリスの旧植民地諸国などで構成した緩やかな国家の共同体のことで、現在加盟国は56カ国ある。加盟国は、行政、経済、医療などの分野で互いに交流を深め、協力関係にある。

このうちイギリス国王が国家元首を務める「英連邦王国」は、イギリス以外ではカナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど14カ国に上る。英連邦の総人口は25億人以上で、世界人口の約3分の1を占めるというので、非常に大きな存在だ。イギリスの君主を長として世界に張り巡らされたこの巨大なネットワークは、イギリスが政治的、経済的、文化的に世界で影響力を維持していくためには不可欠と見られている。