9月19日に行われたエリザベス女王の国葬には、日本から天皇皇后両陛下が参列した。ジャーナリストの大門小百合さんは、「亡くなったエリザベス女王は、イギリスにとっても激動だった70年間王位を務め、国民から高い人気を集めていた。しかし、王室への支持は世代によって温度差があり、跡を継いだチャールズ新国王の前途はバラ色ではない」という――。
ロンドンのウェストミンスター寺院で、エリザベス女王のひつぎに寄り添うチャールズ国王=2022年9月19日、イギリス・ロンドン
写真=AFP/時事通信フォト
ロンドンのウェストミンスター寺院で、エリザベス女王のひつぎに寄り添うチャールズ国王=2022年9月19日、イギリス・ロンドン

注目を集めた天皇皇后両陛下

エリザベス女王の国葬が、9月19日、ロンドン市内のウェストミンスター寺院で営まれた。過去70年間にわたりイギリスと英連邦の君主であった女王の死を、イギリスだけでなく、世界中の人が悼んだ。

そんな中、欧米のメディアでも注目されたのが、天皇、皇后両陛下の葬儀への参列だ。イギリスの新聞テレグラフは9月16日、「日本の天皇は、世界のリーダーが女王の葬儀に集うなか、バスでやってくる」という見出しの記事を載せた。

ワシントンポストも9月17日に、両陛下の参列を報道。お2人の写真を大きく掲載し、「東京の皇居で豪華に暮らす日本の天皇は、月曜日に行われるエリザベス2世の葬儀には、混雑したシャトルバスで向かう予定だ。天皇陛下と雅子さまがバスでの移動を快く受け入れた一方、世界の指導者の中にはそうでない者もいる」と、バイデン大統領など数名のVIPが、セキュリティ対策のほどこされた自分の車を使いたいと主張していると報じていた。この記事によると、イギリスのVIP担当者が、車を使いたがるVIPの対応に苦慮していたという。日本の天皇皇后両陛下の対応は、他のVIPの手本となるものだったようだ。

また、いくつかの欧米メディアは、「日本の天皇は、死を不浄なものとする神道の文化的信念から、伝統的に、自分の親を除いて葬儀に参加していない」とし、今回の葬儀への参列が天皇皇后両陛下にとって、特別の意味を持つものだったと説明している。それを受けて、ツイッターなどのSNS上では、「各国の首脳と乗り合いバスで葬儀に向かわれた天皇皇后両陛下は誇らしい」という日本人の声が相次いだ。

女王の国葬は、史上最も人々に見られたテレビ中継だったと言われている。イギリス国内では、2920万人がテレビ中継を視聴。また、ワシントンポストによると、全世界では77億人が視聴したとされる。

「ほかに代わりが利かない人物」

エリザベス女王は、70年という長い間君主を務め、イギリス王室の価値観をつくってきたといっても過言ではないだろう。伝統を守りつつも、常に新しいものを取り入れ、真面目ながらユーモアのある人柄は、国民に広く愛された。亡くなってからも、多くのメディアが「irreplaceable figure」(ほかに代わりが利かない人物)と伝えている。

その人気は、イギリスの世論調査会社YouGovが、女王が亡くなる前の今年5月に行った人気度ランキングの調査にも表れている。これは、イギリスに住む人を対象に、世界の公人、著名人373人の人気度を調べたものだ。